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2024年02月21日配信

供給不足?『処方薬品切れ』の秘密 | 第787号

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2024/02/20━☆
    健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと

           「秘密の皮膚科学」

    第787号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
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 みなさん、こんにちは。
 シニアフェローの牛田専一郎です。


 「先日風邪で病院に行ったら、
  咳止めの薬がないと言われて......」


 大変でしたね、白木さん。

 今、全国的に病院で処方される薬が
 足りないそうです。

 今日は皮膚から離れたお話です。

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              供給不足?

          『処方薬品切れ』の秘密

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 ▼足りない?


 「ニュースでもやっていますが、
  そんなに切実な状況なんですか?」


 そのようですね、白木さん。

 日本医師会が昨年8~9月に行ったアンケートでは
 院内処方を行っている医療機関で「入手困難な医薬品がある」と
 回答した割合は90.2%でした。

 「発注しても納品されない」状況も49.7%あるとのこと。


 「インフルエンザやコロナウイルスが
  流行っているから製造が
  間に合わないんですかね」


 それも一因ではありますが、
 そうとばかりは言い切れません。

 白木さんは薬には先発医薬品と
 後発医薬品(ジェネリック)があるのをご存じですね。


 「はい。ジェネリックのほうが安いです」


 はい。

 厚生労働省が毎年度2回行っている
 「保険者別の後発医薬品の使用割合(令和5年3月診療分)」では
 後発医薬品の使用割合(全国平均)は80.89%。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35242.html

 2011年までは40%未満でした。


 「そういえば、今では当然のように
  ジェネリックが処方されますね」


 医薬品不足は、実はジェネリック医薬品に
 関係しているんです。





 ▼ジェネリックをめぐる課題


 「ジェネリックはいいことばかりかと
  思っていました」


 ニュースになったこともあるので、
 白木さんもご存じの内容もあるかもしれませんが。


 【1.ジェネリック医薬品の不正問題】

 2020年12月にジェネリック医薬品メーカーの
 製造した薬に睡眠導入剤の成分が混入した
 問題がありました。

 その後の調査で大手のメーカーを含むその他メーカーでも
 製造工程や品質管理の不正が見つかり、
 多くの医薬品の供給がストップしたのです。



 【2.薬価が低くて採算が合わない】

 ジェネリックは価格を低く抑えられ、
 医療費の抑制や患者の負担軽減に繋がることから、
 国が利用を強く推進しています。

 ですが、国が定める薬価は低く、
 メーカーは製造しても採算が合いません。

 市場は急拡大していますが、経営難から
 メーカーの数自体は減る傾向にあります。


 「薬が安いのは私たちには嬉しいですが、
  製薬会社や医療機関は利益が出ないと困りますね」


 その通りなんです、白木さん。





 ▼構造的な課題も


 「供給メーカーはどのくらいあるんですか?」


 日本ジェネリック製薬協会によると
 2022年の資料では約190社でした。
 供給規模では下のようになっています。

 500品目以上  ......3社
 100~500品目......27社
 50~100品目 ......10社
 50品目未満 ......148社


 「製造品目の少ない会社が多いんですね」


 上記で約1万1000品目を供給する
 少量多品種生産になっています。


 「少量多品種......?」


 多くの種類の製品を、少量ずつ製造する生産方式のことです。
 顧客ニーズに合わせた製品を少量で生産するため、
 基本的には在庫をあまり持っていません。

 緊急時には供給が不安定になってしまうんですね。


 また、共同開発で後発医薬品市場に参入しやすくなったので、
 製造を委託し、販売だけ行う企業も増えました。


 「共同開発?」


 またまた、ちょっと耳慣れない言葉かもしれませんね。

 通常、複数の製造販売業者が共同で開発を行っても
 基本的にはそれぞれが承認を取得する必要があります。

 規格や試験方法、安定性試験、生物学的同等製試験の
 資料が必要になりますが。

 ジェネリックについては規制緩和で2005年から、
 一定の条件を満たす場合は共同開発した各社が
 同一の資料で承認申請することができるようになりました。

 ジェネリックの申請時に必要な添付資料は
 もともと少ないのですが、
 共同開発ではさらに省略ができるんですよ。

 このような状況から、
 少量多品種生産と過当競争の状態が起きて
 不安定な産業構造になっているようです。





 ▼対策は


 「う~ん。すぐに解決はしなさそうですが」


 そうですね。
 国も医療費抑制のために安さを重視して
 きた部分があるかもしれません。

 市場の急拡大と参入のしやすさで
 メーカーが増えましたが、社員教育や設備投資が
 追いつかなかった点もあります。

 国では

 ・ジェネリックの品目数を絞り込む
 ・新しい薬価のしくみを検討する

 などの対策を検討しているようですが。
 しばらくは供給不足の状態が続きそうです。

 新しい情報がわかったら
 またメルマガでお知らせいたしますね。




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