メールマガジン「秘密の皮膚科学」
2005年07月26日配信
第39号 あらためて。『しみこまない』の秘密
みなさん、こんにちは。
コスメプロデューサー・牛田専一郎です。
メルマガの発行を始めてから、
牛田はいろいろな方からメールを頂くようになりました。
学生の方、OLの方、主婦の方、
そしてときには男性の方からも。
さらに、牛田と同業の方かな? と思われるような方からも
鋭いご指摘や疑問の声を頂くことがあります。
今回は、そんな「プロ」とおぼしき方から頂いた
1通のメールをご紹介します。
ちょっと専門的な内容になりますが、
どうぞおつきあいくださいね。
☆--------------------------------------------------------☆
あらためて。『しみこまない』の秘密
☆--------------------------------------------------------☆
▼化粧品は皮膚にしみこまない!!
以前に、『皮膚には何もしみこまない!』
というお話をしたことがあります。
白木さん、覚えてます?
「ええ。そりゃあもうビックリしましたからねぇ。
たしかポイントは......
○お肌の一番の役割は、体内を守ること
○身体の一番外側で、紫外線やばい菌、化学物質などの侵入を防ぎ
外的刺激から体内を守っている
○つまり、お肌は体内に何も入り込ませない機能を持っている
○だからどんな化粧品も、お肌にしみこむことはない
○化粧品がしみこむのだとしたら、
海水や泥水だってお肌にしみこむことになってしまう!
......ということ、でしたよね?」
☆詳しくはこちら~『あなたもしている? 思い込みの秘密』
→ http://hisesshoku-derm.com/archives/2004/11/6-2.php
そうです。
ふだん私たちが目にしている化粧品の広告や、雑誌の美容ページでは
さかんに『しみこむ』『浸透する』という表現を使っていますから、
読者の方にとってはずいぶん刺激的な内容だったようです。
そして。
ある読者の方から、こんなメールが届きました。
┌――┐
|\/| 【件名:すべて浸透しない??】
└―――――――――――――――――――――――――――――――
|
|海水やドロ水が皮膚に浸透しないのは、
|分子量が3000モリキュラー以上あるからではないのでしょうか?
|
|化粧水などで、分子量が3000モリキュラー以下であれば
|皮膚の表面を通過して角質層に浸透すると思います。
|
|また、800モリキュラー以下であれば、
|皮下組織まで浸透すると存じておりますが、いかがでしょう?
|
|化粧品がすべてにおいて浸透しないというのは
|誤解を招くと思いますが......
|
└―――――――――――――――――――――――――――――――
「なんだかすこし......
いつも読者の方からいただくメールとは違った感じですね」
そうですね。
おそらくこの分野を専門的に学ばれている方なのでしょう。
もしかしたら、牛田と同業の方かもしれませんね。
「も、モリキュラーって何ですか???」
モリキュラーは「分子」の英語読み。
分子量はモリキュラーウェイトですね。
「分子......。モリ......。ちんぷんかんぷんです......」
分からなくても大丈夫ですよ。
そういう単位があるんだなぁ、というくらいに思ってくだされば。
それにしても。
このメールを受け取ったとき。
牛田はとてもうれしかったのを覚えています。
一人でもたくさんの方にご自分の肌について知ってもらいたい!
という思いから始めたこのメルマガですが、
それが専門的な知識を持つ方の目にも留まっていたとは。
そしてこんなご意見をいただけるなんて。
牛田は胸をあつくして、こんなお返事をお送りしたのでした。
┌――┐
|\/| 【件名:お問い合わせありがとうございます】
└―――――――――――――――――――――――――――――――
●分子量について
============
分子量と皮膚透過性のお話ですね。
実は、牛田も情報を求めているところなのです。
牛田の現在の認識を申し上げます。
皮膚生理の出版物のなかには、
分子量500以下は皮膚を透過する、
と書かれているものもあるようです。
しかし、もっと小さな分子量のアミノ酸(平均分子量110)は
かなり小さいですが透過しないと言われているようです。
分子量は小さいがアミノ酸類は透過しないと。
分子量176のアスコルビン酸は透過するやに言われておりますが、
生体での測定は難しいですね。
牛田が一番支持しているのは、皮膚には分子量に関係無く
(大きなものは無理でしょうが)選択的透過性がある、
とする説です。
つまり、透過するかしないかは、
分子量の大小ではなく、その性質によるということです。
●化粧品の浸透について
==================
以前にメルマガでもお話ししたことがありますが、
薬事法上、医薬品の成分は、医薬部外品・化粧品の
カテゴリーでは配合できません。
ちなみに、医薬品・医薬部外品・化粧品の定義を記しますと、
次のようになります。
1.医薬品 :治療・予防に使用することを目的としたもの
2.医薬部外品:人体に対する作用が緩和なもので、
化粧品と違い、効能・効果を表現できる
3.化粧品 :人体を清潔にし、美化し、
皮膚・毛髪をすこやかに保つことを目的としたもので、
効能・効果を表現できない
☆詳しくはこちら~『薬事法の秘密』~
→ http://hisesshoku-derm.com/archives/2004/12/11.php
裏を返せば、効能・効果がある物質、生化学に影響をあたえる物質は、
リスク(危険性) も大きいので、化粧品には配合してはいけない。
ということになります。
しかし、グリコール酸など、濃度の高いものは、
明らかに角質剥離効果は高く、
病院医院でニキビ治療等に使われていますが、
化粧品会社で製造しております。
また、ビタミンC誘導体も、
医薬部外品では3%以下と濃度が定められていますが、
これ以上の濃度が化粧品では認められています。
矛盾を含んでおりますが、
化粧品に求められているのは、安全性だと考えています。
化粧品が浸透して効果を発揮するのであれば、
生化学に影響を与えている毒=薬であり
副作用の疑いが発生していることになります。
つまり、リスクがあるということですね。
化粧品を作っている立場の私からは申し上げにくいことなのですが、
効果・効能を謳っている化粧品原料で、
皮膚に浸透・透過するものはほとんど無いのが実態です。
もし有望な化粧品原料をご存知でしたら、ご教示くださいませ。
●「浸透しない」という言葉の真意
============================
「化粧品がすべてにおいて、浸透しない」
メルマガではそう表現しましたが、
すこし言葉が足りなかたのかもしれません。
私が意図していたのは次のようなことです。
化粧品広告で頻繁に使われている「浸透する」という表現。
これは、消費者に効果を連想させます。
そして婉曲に誤認を誘導することにつながっています。
しかし、実際にはほとんどが浸透は無く、効果も無い。
薬事法上あってはならないことですが、
消費者は効果があるのだと思い込まされています。
私は、読者の方にこの現実を知っていただきたかったのです。
確かに、界面活性剤は皮膚に浸透して角質を脱脂したり
たんぱく変性を起こしたりしてしまいます。
プラスの意味での浸透はありませんが、
負の意味での浸透はあるということですね。
なんだか皮肉なことです。
メルマガでは思い込みの否定をしておりますが、
化粧品の否定をするものではありません。
読者の皆様に、これは良い! お奨めです!!
という化粧品の開発ができればと切望しております。
これからも、ご質問、お問い合わせはお気軽に!
コスメプロデューサー 牛田専一郎
――――――――――――――――――――――――――――――――
......以上でメールは終わりです。
私がお話した内容、分かりました?
「ちょっと専門的でむずかしいところもありましたけど......。
でも、読者の方に牛田さんの気持ちは伝わってると思いますよ」
そうですね。牛田もそう願っています。
なかなかお返事をできなくて申し訳ないのですが、
みなさんからいただいたメールは必ず読ませていただいています。
みなさんの声は何よりの励み。
これからもいろいろな声を聞かせてくださいね。
次回もどうぞお楽しみに!
★牛田への感想・コメントはこちらへ。
http://hisesshoku-derm.com/archives/01about/info.php
☆--------------------------------------------------------☆
~先週の補足です~お肌と年齢は関係ない!
☆--------------------------------------------------------☆
先週は、『年齢とのカンケイ』の秘密についてお話しました。
→ http://hisesshoku-derm.com/archives/2005/07/38.php
その中で、牛田がこんなお話をしたのを覚えていますか?
"皮脂量や角質水分量は年齢とともに低下しません。
加齢によって低下するのは弾力性のみです。"
現在は「肌は年齢とともにおとろえる」という思い込みが
すっかり定着してしまっています。
ですから、牛田のお話を信じられない......という方も
少なからずいらっしゃったことでしょう。
しかし、このことは、
東邦大学医学部第二皮膚科の学会発表の
なかではっきりと示されているのです。
その内容とデータはこちらから。
→ http://hisesshoku-derm.com/archives/2005/11/post_4.php
使用許諾については、
東邦大学医学部付属大橋病院・皮膚科助教授
日本美容皮膚科学会事務局長の漆畑修先生
の承諾をいただいております。
また、このデータは
株式会社インテグラル http://www.integral.to
代表取締役 五十幡玲子社長にご提供いただきました。
漆畑修先生、五十幡玲子社長、ご協力ありがとうございます!
☆アンケートのお願いです☆
早いもので『秘密の化粧品』も次回で40号を迎えます。
その間、お肌のこと、化粧品のことを
牛田なりに精一杯お伝えしてきたつもりです。
しかし、ちょっと気になっていることがあるのです。
それは
「内容が専門的すぎるのではないか?」
「もっとお手軽な情報が求められているのではないか?」
「それとも、今の内容をもっと深く掘り下げた方がいいのか?」
ということ。
メルマガを配信すると、いつも数件のメールが届きます。
「私もスローコスメを始めてみます」
「お手入れを見直すきっかけになりました」
などなど。
でも、それはごく一部の人の感想なのかもしれない。
もしかしたらその他の人は
「専門的すぎてつまらない」「面白くない」
「理論はいいからキレイになる方法を教えて!」
と思っているのかもしれない......。
そこで、40号を迎えるにあたって、
今後のメルマガの方向性を決めるためにアンケートを
取りたいと思います。
みなさんのお役に立つメルマガにしたいと思っています。
是非、ご協力下さいね。
●アンケートはこちらから(30秒で終わります)
※このアンケートは終了しました
☆メルマガ☆『秘密のプロジェクト』も好評配信中!
はげしく稼動中!の『秘密のプロジェクト』。
"ほやほや"の最新情報をメルマガでお届けしています。
最新号をちょっとだけご紹介。
○モニター測定が始まったようです。
測定値の解説と、大人のニキビの方モニター募集は
こちらから↓
http://jstcd.or.jp/mailmagazine/number_16/
...続きは『秘密のプロジェクト』をお読みくださいね。
☆ご登録はこちらからどうぞ!
→< http://jstcd.or.jp/mailmagazines/ >
関連性の高い記事
【次のエントリー】
→第40号 暑さを乗り切る!『夏の美容対策』の秘密
【前のエントリー】
→第38号 カンケイない!?『年齢とのカンケイ』の秘密