どうして落ちにくい?『手についた柔軟剤・抗菌剤』の秘密 | 第776号

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2023/11/28━☆
    健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと

           「秘密の皮膚科学」

    第776号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
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 みなさん、こんにちは。
 シニアフェローの牛田専一郎です。


 白木さんがぶつぶつ言いながら
 手を洗っています。


 「本当に落ちているのかなあ......」


 白木さん。
 どうして分かりにくいのかお話しましょう。

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          どうして落ちにくい?

       『手についた柔軟剤・抗菌剤』の秘密

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 ▼目に見えないのです


 Aさんがこんなご質問をくださいました。


 Aさん
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 手についている刺激物は見えないので、
 ペーパーでこすって本当に落ちているか、
 見極めるのが難しいです。

 ペーパーなしで手と手を擦っただけで
 落ちないのでしょうか。

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 「目に見えないからよくわからないですよね。
  落ちてるかどうか、どうしたらわかりますか?」


 手で触れた肌に赤みやニキビが出なければ
 刺激物は落ちています。 


 「触ってみないとわからないのか......」


 ええ。

 柔軟剤や抗菌剤は落ちにくいため、
 ペーパータオルや手ぬぐいに
 手をこすりつけて落とさないといけません。





 ▼どうして落ちにくい?


 「どうして普通に手洗いをしただけでは
  落ちないのでしょうか」


 まず、柔軟剤も抗菌剤も
 陽イオン界面活性剤です。

 界面活性剤の分子構造は、
 丸い親水基と軸にあたる親油基から成っています
 ちょうどマッチ棒のようなイメージですね。

 陽イオン界面活性剤は、
 水に溶けたとき丸い親水基の部分が
 陽イオンに電離する性質を持っています。

 ☆界面活性剤の秘密↓
  https://hisesshoku-derm.com/archives/2006/11/kaimen-himitsu.php


 柔軟剤と抗菌剤がそれぞれ
 どんなはたらきをしているか見てみましょう。



 【柔軟剤】

 水の中では繊維の表面は
 マイナスの電気を帯びています。

 繊維のマイナスの電気に引きつけられて
 陽イオン界面活性剤は、プラスの親水基から
 繊維の表面に吸着します。

 すると、油になじみやすい親油基が、
 繊維の外に向いて並びます。
 繊維の表面を薄い油の膜で覆うような形になります

 これが繊維同士のすべりをよくして、
 手触りをやわらかくしているのです。


 「すすいで柔軟剤が落ちてしまったら
  ふわふわの効果が得られないですよね」


 その通りです、白木さん。
 だから水で洗っただけでは落ちないように
 できているんですね。



 【抗菌剤】

 作用機序ははっきりとは解明されていないようですが。

 マイナス電荷を持つ細菌やウイルスの表面に、
 抗菌剤の陽イオン界面活性剤が吸着することで
 細胞膜のタンパク質を変性させて
 機能を失活させているとされています。


 「柔軟剤も抗菌剤も表面にしっかりつくことで
  効果を発揮しているんですね」


 はい。
 ちなみに皮膚や髪の表面はマイナスに帯電しています。


 「ということはもしかして......」


 柔軟剤や抗菌剤が吸着しやすいのです。





 ▼手のひらは丈夫なのです


 抗菌剤にも使われる陽イオン界面活性剤の
 刺激性は一般的に強いのですが。


 「手についていることはわからないですよね」


 そうですね、白木さん。
 もちろん指先が荒れてしまう方もいますが。

 手のひらは丈夫にできていますから
 日常的に柔軟加工や抗菌加工をしたものに
 触っていてもトラブルは出にくいのです。

 でも、しっかり身の回りの柔軟剤、抗菌剤は
 手にくっついてきています。

 その手でマスクの内側を触ってしまったり、
 顔や髪を触ってしまったりすると、
 肌にトラブルが出てしまうのです。






 ▼今の解決策は......


 日常生活で手に付着しやすい柔軟剤や抗菌剤は
 その効果を発揮するために取りつきやすく
 落ちにくい性質があります。

 間接接触を防ぐために、洗顔洗髪前は
 流水の下でしっかりペーパータオルに手を
 こすりつけて落とすようにしましょう。

 やっかいな方法しかないのです。



 ■将来的な解決策は

 柔軟剤や抗菌剤を使っていない衣料や日用品で
 非接触生活空間を作れれば解決するのですが。

 一次刺激性物質の使われていない住宅を作る。
 不可能ではないと思いませんか。




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