バックナンバーメールマガジン「秘密の皮膚科学」
2022年03月15日配信
どんな仕組み?『非接触生活で改善するわけ』の秘密 | 第701号
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2022/03/15━☆
健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと
「秘密の皮膚科学」
第701号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
みなさん、こんにちは。
シニアフェローの牛田専一郎です。
「牛田さん、ところで皮膚って
どうして傷むんでしたっけ?」
白木さん......基本に返ってきましたね。
そういえば皮膚の役割やしくみだけ詳しく
お話したことはなかったかもしれません。
☆-------------------------------------------------------☆
どんな仕組み?
『非接触生活で改善するわけ』の秘密
☆-------------------------------------------------------☆
▼健康な素肌って?
まずはおさらいから。
皮膚は、胃や腸と同じ、身体の臓器の一部です。
身体の一番外側で、紫外線や細菌・ウイルス、
化学物質などの侵入を防ぎ外的刺激から体内を守っています。
つまり、肌は体内に何も入り込ませない機能を
持っています。
「そのおかげで泥水に手を入れても
肌にしみこんだりしないんでしたよね」
よく覚えていましたね、白木さん。
体内を守ることが皮膚の大きな役割なのですが、
その皮膚をさらに守っているものは
何だったかわかりますか?
「えーっと......皮膚常在菌ですね!」
その通りです。
私たちの肌には、約1兆個もの皮膚常在菌がすみつき、
皮脂膜とともに、肌の健康を守っているのでしたね。
皮膚常在菌は汗、皮脂を取り込み、脂肪酸や
グリセリンを産生します。産生された脂肪酸や
グリセリンを取り込む皮膚常在菌も存在し、
精妙なバランスで共存しています。
このバランスが整った状態で悪性菌の
繁殖を防いでいるのです。
さらに『皮脂膜』も皮膚を守っています。
皮膚はいくつもの薄い層で構成されています。
それらの層の一番外側にあるのが「皮脂膜」。
汗と皮脂から作られる天然の保護膜です。
皮脂膜は、皮膚を外界の刺激から守りながら、
その表面を滑らかで潤いあるものにしています。
健康な素肌には自ら潤いを作り出す力があるのです。
皮脂膜が守ってくれているからこそ、
皮膚は健康な状態を保つことができ、
「体内を守る」という本来の役割を果たすことができるんですよ。
▼健康な皮膚を乱すものは?
「普通の状態なら誰でも肌はきれいなんですね?」
そうなのです。
この皮膚生理を乱す要因はいくつかあります。
〇保湿
化粧水、乳液、美容液、オイルなどしっとりした
使用感のものをつけてしまうと、皮脂分泌の妨げとなり、
皮膚は自ら潤う力を発揮できなくなってしまいます。
〇殺菌、洗浄
石けんやボディソープ、洗顔料、クレンジング剤での
洗浄をしたり、殺菌効果のあるものを肌につけると、
皮膚常在菌も殺菌してしまい、バランスが崩れることで
悪性菌が繁殖しやすくなります。
〇外傷(角質層が破れる)
スクラブ入りの洗顔料で洗ったり、ナイロンタオルで
ごしごしこすったりしたときなど、
物理的に角質層に傷がついた状態です。
〇タンパク質を変性させるものとの接触
「タンパク質が変性するって
どういうことでしたっけ」
タンパク変性はじつは身近に起きている
現象なんですよ、白木さん。
たとえばゆで卵。タンパク質は高温になると変性しますが、
熱変性でタンパク質が固化してゆで卵ができるのです。
他にもお茶やワイン、渋柿を口に入れると
苦味を感じますよね。
それはそれはタンニンが舌や口腔粘膜の
タンパク質と結合し、タンパク質が変性した際の痛みを
「渋み」として感じているためです。
「ふ~む。他にもタンパク質を変性させるものって
あるんですか?」
ゆで卵やタンニンは熱変性と変性剤(一次刺激性物質)による
変性でしたが。
他にも酸変性・アルカリ変性(強酸、強アルカリによるもの)、
強い紫外線などがあります。
ちなみに日常的に使用されている生活用品には、
使用感改善、洗浄効果や殺菌効果を持たせるために
界面活性剤やシリコーンが使用されています。
「そういうものもタンパク質を変性させるんですね」
そうなのです、白木さん。
皮膚が傷んでいる状態とは、皮膚のタンパク質が
変性したり傷ついて修復されないときのことです。
ニキビや毛穴の開大、赤みや色素沈着があるとき
皮膚は傷んでいます。
炎症は生体の防御反応で、傷ついたり、変性を受けた
細胞を分解したり修復したりするために起こっているんですよ。
▼おわりに ~皮膚生理を意識して綺麗な肌に~
今日はあらためて、皮膚の仕組みをお話をしました。
白木さん、いかがでしたか?
「皮膚生理を乱すものと接触をしなければ
肌が荒れることはないんですよね?」
はい。
今、皮膚がタンパク変性を起こしている状態でも
接触をしなければ、必ず健康な皮膚に戻ります。
やることはとてもシンプル。
日常生活でも皮膚生理をときどき思い出してくださいね。
☆ご相談・ご質問など、お気軽にどうぞ。
関連性の高い記事
- 第659号 行っても大丈夫? 『岩盤浴や温泉で気をつけること』 の秘密
- 乳児も大人も?『皮膚の生理機能は同じ』の秘密 | 第754号
- 肌の生活習慣病(2)『予防・改善編』の秘密 | 第753号
- メディア情報?『増える洗顔のご質問』の秘密 | 第725号
- 保湿と紫外線の常識?『医師用テキスト』の秘密 | 第721号
- カサつく原因は?『ワセリンとのつき合いかた』の秘密 | 第699号
- 両立できる?『メイクをしながら肌を改善するには』の秘密 | 第695号
- 第681号 肌の強さは変わる?『非接触生活を始めたら』の秘密
- 第680号 そろそろ気になる?『季節の変わり目の肌の変化』の秘密
- 第679号 何もつけないせい?『刺激感や毛穴のつまり』の秘密
- 第672号 どんなふうに?『理想的な洗顔』の秘密
- 第523号 基本のおさらい(2)『皮膚生理』の秘密
- 第397号 非接触生活式?『アンチエイジング』の秘密
- 第351号 かぶれる?『過剰な皮脂分泌』の秘密
- 第236号 石けん、必要ですか?『洗浄剤アンケート』の秘密
- 第233号 14以上は?『脂肪酸と菌』の秘密
- 皮膚常在菌の共生関係
- 第147号 トラブルの原因は「帽子」?『お肌に触れる、その前に』の秘密
- 第141号 お茶に渋味を感じる理由『タンパク変性』の秘密
- 第139号 ちょっとだけなら大丈夫?『日常生活に潜むたんぱく変性』の秘密
- 第133号 手荒れはなぜ起きる?『タンパク質と洗剤』の秘密
- タンパク変性の秘密
- 第128号 つけたまま眠る?『夜のファンデーション』の秘密
【次のエントリー】
→何と似ている?『肌の強さ、弱さの例え』の秘密 | 第702号
【前のエントリー】
→日本古来の繊維?『大麻』の秘密 | 第700号