バックナンバーメールマガジン「秘密の皮膚科学」

メールマガジン「秘密の皮膚科学」

2022年09月14日配信

新しいビタミンC製剤?『開発のワケ』の秘密 | 第723号

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2022/09/13━☆
    健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと

           「秘密の皮膚科学」

    第723号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆


 みなさん、こんにちは。
 シニアフェローの牛田専一郎です。


 医師向けのテキスト紹介が前回で終了しました。


 「皮膚臨床技術研究会の
  サイトに掲載するとか」


 coming soonです、白木さん。

 もう一つ研究会の集大成として
 お伝えしたいことがあります。

 それはビタミンC製剤についてです。

☆-------------------------------------------------------☆

         新しいビタミンC製剤?

         『開発のワケ』の秘密

☆-------------------------------------------------------☆


 ▼これまでと違う新しいビタミンC製剤を


 「ASVCのことですよね!
  そういえば読者の方から聞かれても
  牛田さんはあっさりとしか答えていないですよね」


 はい。簡単にお伝えするのが難しかったのです。
 開発の経緯と、ASVCとはいったい何なのか?
 お話しますね。


 2005年から皮膚の測定を始めて
 早い段階で分かってきたことは
 炎症起因物質と接触をしない生活習慣に切り替えると、


 ・ニキビ・毛穴の開き・酒さ・赤み・毛孔性角化症
 ・しわ・カサつき・乾燥
 ・肌荒れ・アトピー性皮膚炎・痒み

  の改善は顕著に見られますが

 ・シミ・くすみ・肝斑・黒ずみ

  の改善には時間がかかることです。


 生化学に影響を与えるもので安全性の高いもの。
 直ぐに浮かぶものはアスコルビン酸です。





 ▼ビタミンの種類


 「アスコルビン酸って
  ビタミンCのことでしたっけ」


 はい。
 人体の機能を正常に保つためのビタミンは
 「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に分けられます。


 ☆詳しくはこちらを読んでみてくださいね↓
  ビタミン - e-ヘルスネット - 厚生労働省
  https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html


 「ビタミンCはどっちなんでしょうか?」


 アスコルビン酸は水溶性ビタミンです。





 ▼アスコルビン酸の特徴


 アスコルビン酸には以下の作用があると
 一般的には言われています。


 生体内作用

  ◎抗酸化作用
  ◎コラーゲンの形成
  ◎血中コレステロールを下げる......など


 皮膚に対する作用

  ◎コラーゲンを生成し、皮膚の弾力性を保つことにより、
   たるみやシワを予防・改善する。
  ◎紫外線により作られるメラニンの生成を抑制しながら、
   沈着したメラニンを還元し、白色メラニンにする。
  ◎過剰な皮脂分泌の抑制......など


 「いいことばかりですね!」


 ええ。そうなんですが......。

 アスコルビン酸を大量に摂取しても、
 水溶性ですから過剰に摂取された分は、
 尿や便として排出されてしまいます。

 さらにアスコルビン酸は、副腎や脳下垂体など
 他の臓器に優先的に使用され、
 皮膚には配分されにくいのです。


 「う~ん。だったら肌に塗れば
  いいんでしょうか」


 各種アスコルビン酸製剤の塗布実験を
 行いました。





 ▼いろいろあるアスコルビン酸製剤


 ビタミンC誘導体はビタミンCに
 化学修飾することで安定化させ、
 化粧品に使いやすい形状にしています。


 〇アスコルビン酸(分子量176.13)

 〇水溶性ビタミンC誘導体

  リン酸と結合させたもの。「アスコルビルリン酸Na」(分子量358.08)と
  「アスコルビルリン酸Mg」(分子量289.54)等がある。

 〇脂溶性ビタミンC誘導体

  水溶性であるビタミンCに油分を結合させて脂溶性にし、
  クリームやジェルなどにも配合可能にしたもの。
  「テトラヘキシルデカン酸アスコルビル」(分子量1129.00)、
  「パルミチン酸アスコルビル」(分子量414.53)がある。

 〇両親媒性誘導体(分子量:560.00)

  リン酸型ビタミンC誘導体にパルミチン酸を
  付加し親油性を持たせたもの。
  水溶性と油溶性の両方の特性をもつ。


 詳しく知りたい方は調べてみてくださいね。


 ビタミンC誘導体の化学修飾部分は、
 もとのアスコルビン酸の分子よりも大きく、
 誘導体全体の分子の大きさはもとの
 アスコルビン酸の3~8倍になります。

 誘導体となってもビタミンCの効能は
 アスコルビン酸の
 構造部分からしか得られないため、

 誘導体を10%配合している化粧品でも
 ピュアビタミンC10%とは同じ効能にはなりません。


 「でも誘導体って聞くとなんとなく
  浸透しそうな気がしますが......」


 そんな気がするかもしれませんが、
 デューク大学の論文によると
 純粋なアスコルビン酸は皮下浸透し、
 誘導体は皮下浸透しないという研究結果が
 報告されています。

 (S R Pinnell , H Yang, Topical L-ascorbic acid: 
  percutaneous absorption studies.Dermatol Surg 27:2February 2001
  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11207686/)


 なお、一般にビタミンC製剤は
 皮膚に乾燥感が出ると言われるのは、
 水溶性のビタミンC誘導体がアルカリ性であるためです。

 皮膚はアルカリ性に弱く酸性には
 強い性質がありましたね。


 「するとどうしたらいいんでしょうね」


 そこで新しい製剤を開発するしかなくなったのです。





 ▼続きはまた次回


 長くなってしまいましたので、
 この続きは次回お伝えしますね。

 では、来週のメルマガをお楽しみに。




 ☆ご相談・ご質問など、お気軽にどうぞ
  →→ https://jstcd.or.jp/contact/
メールマガジン「秘密の皮膚科学」

関連性の高い記事

【次のエントリー】
 →続・新しいビタミンC製剤?『開発のワケ』の秘密 | 第724号

【前のエントリー】
 →水の影響はある?『医師用テキスト最終回』の秘密 | 第722号

このページのTOPへ