メールマガジン「秘密の皮膚科学」

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2010年10月12日配信

第251号 抗菌グッズで?『家庭用品による健康被害』の秘密

 みなさん、こんにちは。
 コスメプロデューサーの牛田専一郎です。


 突然ですが白木さん、
 【抗菌グッズ】って持ってますか?


 「あまり意識していないですけど
  よく見かけますよね、<抗菌>のマーク。

  ......あ! 私のデスクマットにも付いてました!」


 家庭用抗菌グッズが増え、様々なものが「抗菌」を謳っていますが、
 近年、家庭用品に使用される化学物質による健康被害が増えています。


 これまで、このメルマガでは
 薬事法の規制を受けている「化粧品」を主に取り上げてきましたが、
 今回は【家庭用品】についてお話ししたいと思います。

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           ── 抗菌グッズで? ──
  
         『家庭用品による健康被害』の秘密

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 ▼お肌が改善しないのは、なぜ?

  ┌────────────────────────────
  |【8項目を実践しているのに......】
  | 
  | "何もつけない"を実践し始めて二週間が経ちました。
  | 洗髪については、丁寧なブラッシングと予洗い、
  | 濯ぎを徹底したところ、
  | シャンプー無しでも気にならなくなりました。
  | 
  | ASVC22の他に小麦粉シャンプーも使用し、
  | また友人宅に宿泊した際には、湯シャンでも大丈夫でした!
  | 
  | 最近では顔につけ始めているのですが......
  | 全体的な赤み・痒みが気になってきました。
  | 
  | "何もつけない"を始めてすぐに顎に、
  | それから段々と額、こめかみにも
  | 小さなニキビが出来てしまいました。
  | 
  | 洗剤等も変え、以前の洗剤で洗濯していた物も洗濯し直し、
  | 手も手拭いやタオルでこまめに拭っていたりと、
  | 8項目を実践しているのですが......
  | 
  | 恐らく、ついつい手で
  | 顔に触れてしまうことが原因かと思われます。
  | 
  | 痒みを感じるとつい触れてしまう、もしくはタオル等で
  | 押さえてしまうので回復が遅いのかな、と。
  | 
  | "何もつけない"は早々に達成できたのですが、
  | 新たな試練のようです。
  | STEP2に進みつつ、完全なる非接触を徹底したいです。
  | 
  | 自分が思っていた以上に肌が弱いと言うか、影響を
  | 受けやすいことがよく実感できた二週間でした。
  | 
  | 早く赤み・痒み・ニキビから解放されることを祈りつつ、
  | 努力を続けていきます。どうぞ引き続きお願い致します。
  | 
  |                     (30代・女性)
  └────────────────────────────
  ┌────────────────────────────
  |【慢性的な皮膚炎です】
  | 
  | 日々、何もつけないに励んでおります。
  | 最近は首の生え際、右手の甲、両肘が
  | 慢性的に皮膚炎の状態です。
  | 
  | 先日のメルマガを拝見して、
  | いろいろ再確認させてもらいました。
  | 仕事柄、なかなか徹底できず、治まる様子はありませんが、
  | やはり意識は付きます。
  | 
  |                     (30代・女性)
  └────────────────────────────
  ┌────────────────────────────
  |【仕事中に突然かゆくなることも】
  | 
  | そういえば、肌に赤みが出るときは、
  | その前兆かのように突然肌が痒くなり、
  | 少しだけ掻いている気がします。
  | 
  | 痒くなるのは、やはり何か
  | 刺激物に触れているのでしょうか......。
  | 
  | 仕事(デスクワーク)中に突然、だったりするので、
  | その直前に何かに触れたということはないと思うのです。
  | 
  | 無意識なだけかもしれませんが、
  | 突然の痒みは外からの刺激だけでなく、
  | 身体の内側から何か原因があることもありますでしょうか。
  | (特に食物アレルギーは持っていません。)
  | 
  |                     (30代・女性)
  └────────────────────────────






 ▼刺激になりうる「家庭用品」


 「上でご紹介したメールのように、
  8項目を実践しているのにお肌が改善しない......
  という声をよくお聞きします。

  牛田さん、これはなぜなのでしょうか?」


 以前にも、このテーマを取り上げたことがありましたね。

  ☆238号 思い当たらない?『不調の理由』の秘密
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2010/06/238.php


 原因を究明した結果、
 皆さんから寄せられたトラブルの起きた状況の
 ほとんどが柔軟剤、抗菌剤に由来するものでした。

 化粧品によるトラブルは原因を特定しやすく、
 自分で回避できるため対処しやすいのですが、
 家庭用品によるものは気づきにくく、
 避けるのが難しい状況がたくさんあります。

 国立医薬品食品衛生研究所に報告されている事例をもとに、
 いかに私たちの生活が多くの刺激物質に取り囲まれているのか
 解説したいと思います。


 



 ▼家庭用品による健康被害の事例


 冒頭でもお話ししましたが、
 近年、家庭用品に使用される化学物質による健康被害が増えています。

 家庭用品規制法における「有害物質」とは、
 主として家庭用品に含まれ、
 健康被害を生じるおそれのある物質のことです。

 薬事法、食品衛生法、毒物及び劇物取締法等により
 すでに規制されている製品は除外されています。


 国立医薬品食品衛生研究所の報告にも、
 家庭用品に使われる抗菌剤等との接触による
 健康被害が複数あり、その多くは「皮膚炎」です。


 ☆国立医薬品食品衛生研究所の報告
  http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2006/2006-special%20report-001.pdf


 1996年以前は、職業的接触による健康被害のみで、
 一般消費者からの健康被害は全く報告されていないと記載されていますね。


 家庭用抗菌グッズはO-157が流行った1996年から増えてきたようです。
 以下のものとの接触によって
 アレルギーが起きたという報告があります。

  --------------------------------------------------------
  ○手指殺菌剤
  (四級アンモニウム塩系、フェノール系、アミノ酸系抗菌剤)
  ○抗菌カテーテル(ビグアナイド系抗菌剤)
  ○繊維用抗菌剤(四級アンモニウム塩系抗菌剤)

  ○殺菌防腐剤(塗料) (フェノール系抗菌剤)
  ○湿気取り(防カビシート) (アルデヒド系抗菌剤)
  ○靴のにおい取り(防カビシート) (アルデヒド系抗菌剤)

  ○椅子(PVC レザー製表地) (ピリジン系抗菌剤)
  ○デスクマット(ピリジン系抗菌剤)
  ○白衣の襟(アニリド系抗菌剤)
 --------------------------------------------------------

 1997年には、抗菌剤で加工された
 ビニールレザー製椅子との接触により、
 学校内で皮膚炎が集団発生した事例があります。

 最近では、デスクマットの抗菌剤により、
 皮膚炎が発生したという新聞記事やニュースを見た方も多いでしょう。

  抗菌剤以外にも、Tシャツ(紫外線吸収剤)、
 綿のふとん側地(防ダニ加工剤)による健康被害も報告されています。


 以下の家庭用品についても、家庭用品規制法に並行し、
 各業界で自主基準に沿った安全対策が実施されています。

--------------------------------------------------------
  ◇ウェットワイパー類
   (ウェットティッシュタイプのクリーナー)
  ◇家庭用カビ取り剤
  ◇家庭用カビ防止剤
  ◇家庭用不快害虫用殺虫剤
  ◇家庭用洗浄剤
  ◇家庭用シミ抜き剤
  ◇一般消費者用芳香・消臭・脱臭剤
  ◇コンタクトレンズ用洗浄剤・保存剤・洗浄保存剤
--------------------------------------------------------


 ご報告のメールにあった
 「仕事中に突然顔がかゆくなる」
 「首、手、両肘に常に炎症がある」
 といった症状は......

 事務用品、衣類や制服等、
 職場に抗菌仕上げ等の加工をしたものが
 溢れているからかもしれません。






 ▼そもそも抗菌剤とは?


 抗菌剤は大きく
 無機系(金属系)抗菌剤、合成有機系抗菌剤、天然有機系抗菌剤
 の3種類に分けられます。

 無機系は銀、銅など、金属イオンの静菌作用を利用したもの、
 合成有機系抗菌剤は化学的に合成した抗菌剤、
 天然有機系抗菌剤は一般的に植物が持つ抗菌成分を利用したものです。

 無機系は比較的安定していますが、
 合成有機系は汗や脂に溶けやすく、
 問題が起こりやすいと言われています。

 ただし、何系であろうとも
 「抗菌作用がある」ということは、
 皮膚の常在菌にも影響を与えるということです。

 抗菌剤は、皮膚のバリア力が低下していると、
 誰でも皮膚トラブルを起こす可能性がある一次刺激性物質です。






 ▼トラブルを改善、あるいは未然に防ぐには


 肌トラブルが改善するか否かは、
 ◇接触物に気づくことができるか?
 ◇そして上手に接触を避けられるどうか?
 にかかっているようです。

 日常の生活環境に
 柔軟仕上げをしたものや抗菌剤仕上げをしたものが
 たくさんあることは何度かお話しましたが、
 それが思っていたよりもずっと多いことが分かってきました。


 抗菌剤、柔軟剤だけでなく、
 ゴム手袋などに使用される劣化防止剤も
 皮膚炎を起こすという報告があります。

 復習になりますが、私たちの身の回りには
 皮膚トラブルを引き起こす可能性のある
 一次刺激性物質が数多くあります。

 刺激物質に直接触れた場合はもちろんですが、
 それらに触れた手で、一瞬でも顔や身体に触れてしまうと、
 思いがけず大きなトラブルが現れることがあります。

 お肌の弱い方は、以下の点に気をつけましょう。


 ---【日常生活で肌トラブルを起こさないようにする3つの方法】---

  1.化粧品や洗濯洗剤等、自分で選択できる接触物については
    「何もつけない」非接触を実践する。

  2.日常生活で無意識のうちに顔を触らないよう心がける。

  3.洗顔等で顔に触れるときは、
    手についた一次刺激性物質を落としてから。

    流水のもと、トップクリアリキッドで洗った
    手ぬぐいやタオルで手を擦るように洗い、
    その後は、新しい手ぬぐいやタオルで拭きましょう。

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  普段から肌のバリア力を落とさないようにすることが
  トラブルの予防につながります。

  家庭では、自分でできる8項目を実践してくださいね。

   ☆【健康な素肌を取り戻すための8つの習慣】はこちら!
    http://hisesshoku-derm.com/archives/2010/01/219.php




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