メールマガジン「秘密の皮膚科学」
2016年09月06日配信
第523号 基本のおさらい(2)『皮膚生理』の秘密
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2016/09/06━☆
健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと
「秘密の皮膚科学」
第523号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
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みなさん、こんにちは。
シニアフェローの牛田専一郎です。
"本当に何もつけなくて大丈夫?
肌を守るために、化粧品をつけるべきでは?"
そんなビギナーの方の声にお応えして、
前回は『化粧品』についてお話しました。
☆第522号 基本のおさらい『化粧品』の秘密
http://hisesshoku-derm.com/archives/2016/08/522.php
今回は、私たちの身体を覆う『皮膚』について
白木さんと一緒に考えてみましょう。
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── 基本のおさらい(2) ──
『皮膚生理』の秘密
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▼原人からヒトへ ~ 皮膚の進化 ~
ヒトは、進化の過程で原人のような毛を失い、
"身体を守る"という大きな役割を、
薄い皮膚が担うことになりました。
汗腺や皮下脂肪、メラニン色素が発達し、
皮膚表面は、汗と皮脂からつくられる
皮脂膜で覆われるようになったのです。
汗腺が発達し、体温調節機能が向上したことで
長距離を走って移動できるようになるなど、
皮膚の変化が、ヒトの行動様式にも影響を与えたと言われています。
「日ごろ何気なく歩いたり走ったりしていますが、
それは皮膚のはたらきのおかげだったんですね」
そうなんです、白木さん。
ふだん意識することはあまりないかもしれませんが、
皮膚は、ヒトの生活全般にわたって、大きな役割を果たしているのです。
▼皮膚の役割は『身体を守ること』
私たちをとりまく環境には、
寒暖差や紫外線、細菌やウイルスなどの問題が存在しています。
皮膚は、さまざまな機能を駆使してこれらに対抗し、
私たちの身体を守っています。
●暑さ・寒さ
→汗を分泌し、体温調節をする
●乾燥
→皮脂を分泌し、潤いを与える
●紫外線
→メラニンを合成し、紫外線の影響を抑える
●細菌やウイルスなどの病原体
→免疫力をもつ
●物理的・化学的に身体が傷つく危険性
→物理的な強さをもつ
「皮膚がこんなに多機能だったなんて!」
ええ。
化粧品の広告では
皮膚はかよわく、守るべき存在のように描かれていますが、
本来はとても丈夫で、高機能な器官なのです。
皮膚が"何かをつけてお手入れをしなければ健康を維持できない"
器官であるとしたら、生物にとって一番大切な生命維持が
危ういことになってしまいます。
▼『つける』から肌が荒れる
「皮膚は丈夫につくられている器官なのですね。
それなのに、肌荒れが起こるのはなぜなのでしょうか?」
皮膚には、触れたものの影響を受ける性質があり、
次のことをすると、皮膚生理が乱れてしまうのです。
◆皮膚生理を乱す行為(1)
→【タンパク変性物質と接触すること】
前回もお話しましたが、
基礎化粧品やメイク用品、シャンプー・リンス、石けん、
柔軟剤や抗菌剤などはタンパク変性物質であり、
触れることによって肌に炎症が起こる『一次刺激性物質』です。
良かれと思って使っている方が大多数だと思いますが、
使用することで、肌を傷めてしまいます。
肌の弱い方ほど、その影響が大きく現れます。
O-157が流行した1996年ごろから衛生意識が高まり、
抗菌グッズが身近なものとなりました。
現代は、肌の弱い方が
肌トラブルを起こしやすい環境になっていると言えます。
◆皮膚生理を乱す行為(2)
→【肌に何かをつけたままにしておくこと】
皮膚の健康は、精妙なバランスのうえで成り立っています。
皮脂膜、皮膚常在菌がバランスを維持できるのは、
肌に何もついていないときだけです。
皮膚の機能は、何もつけない、そのままの状態で完結しているのです。
▼なぜ? を考える習慣を
「何かをつけないから肌が荒れるのではなく、
何かをつけるから、肌が荒れてしまうのですね」
そのとおりです。
読者の方から『○○○という成分は効きますか?』
『○○○という化粧水は皮膚バリアを修復するそうですが?』
といったお問い合わせをよくいただきますが、
いずれも、効果は期待できません。
その理由は、次の3つです。
●体内を守る役割を担っている皮膚には、何も浸透しないから。
●皮膚は、それ自体で完結した器官であるから。
●薬機法において、化粧品は、安全性の面から
効能・効果があってはいけないことが定められているから。
衛生意識やライフスタイルの変化により、
以前は肌に触れることのなかった物質が増え、
接触性の皮膚トラブルを起こす方が増えてきています。
化粧品を手に取る前に、
どうしてそのトラブルが起こってしまったのか、
原因を考えるようにしましょう。
▼おわりに ~ 知ることが、肌を守る ~
前回は化粧品、今回は皮膚についてお話しました。
白木さん、いかがでしたか?
「久しぶりに基本をおさらいして、
あらためて"知ること"の大切さを感じました」
そうですね。
肌の強い方は、どのような化粧品でも楽しんで使うことができますが、
肌の弱い方は、化粧品と皮膚、両方の知識をもつことが
自分の肌を守ることにつながります。
化粧品に頼りたくなってしまったときは、
今回お話した"皮膚のはたらき"を思い出してくださいね。
☆ご相談・ご質問など、お気軽にどうぞこちらへ。
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