メールマガジン「秘密の皮膚科学」

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2010年04月20日配信

第232号 満を持して?『脂肪酸と炭素数』の秘密

 みなさん、こんにちは。
 コスメプロデューサーの牛田専一郎です。



 お待たせしました!

 今回はついに【脂肪酸】についてお話します。



 「脂肪酸って何のこと??」


 何しろ4ヶ月近くも前のことなので、
 白木さんのようにお忘れの方も多いかもしれませんが。

 昨年末に"予習"をしたきり、
 そのままになっていたテーマなんです......。

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            ── 満を持して? ──

           『脂肪酸と炭素数』の秘密

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 ▼白木さん、思い出す


 「あ~~そういえば!
  そんなこともありましたねぇ。これですね!?

   ☆第217号 来年の予習?『脂肪酸』の秘密
    http://hisesshoku-derm.com/archives/2009/12/217.php



 そうそう、それです。

 217号では
 ◆石けんから遊離する脂肪酸は、
  洗濯後の布地だけでなく、
  お肌にも残留する。

 ◆石けんを使ってもなんともない人がいる一方で、
  石けんが刺激となってしまう人がいる。
  このナゾは、脂肪酸の働きのなかに隠れているらしい!


 というところまでお話しました。

 肌の弱い人、接触性過敏症候群の人にとって
 石けんの洗浄力以外の何が刺激となっているのでしょうか。

 今回は、遊離した脂肪酸の「炭素数」についてお話します。




 

 
 ▼炭素数の数が刺激の強さを左右する


 石けんは、脂肪酸とアルカリを
 化学反応させることによってでできたものです。


 217号でご紹介した、こちらの資料でも解説されています。
 ◎横浜国立大学・大矢勝先生のサイト
  『界面活性剤とは:石けん』(PDFファイル)
  http://liv.ed.ynu.ac.jp/kaisetsu/surf05.pdf


 脂肪酸の種類は、炭素数と、
 飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸かの違いで分かれています。


  +------------------------------------------------------------+
  ◆飽和脂肪酸
   ヘキサン酸(C6)、オクタン酸(C8)、
   デカン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、
   ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、
   ステアリン酸(C18)、エイコサン酸(C20)

  ◆不飽和脂肪酸
   パルミトレン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、
   リノール酸(C18:2)、リノレイン酸(C18:3)

  (※Cは炭素)
  +------------------------------------------------------------+




 一般に石けんに使われる脂肪酸は
 ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などです。

 それぞれCの数に注目してみると......
 石けんに使われている脂肪酸の炭素数は、
 12~18のものが主体ということが分かります。

 炭素数が12以下の場合は強い刺激性があり、
 14以上は刺激性は弱くなると言われています。

  ◎資料:日本石鹸洗剤工業会「石けん洗剤知識」を一部改変
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2010/04/fattyacid.php



 脂肪酸にはいくつか種類があることが分かりましたが、
 それぞれ特徴があります。

 ◇脂肪酸の炭素数が少ないものは
  →冷水に良く溶けるが、洗浄力が下がる

 ◇脂肪酸の炭素数が多いものは
  →洗浄力は高くなるが、水に溶けにくい

 ◇脂肪酸の炭素数が少ないものは
  →皮膚への刺激性が高くなる






 ▼炭素数の少ない脂肪酸は刺激大!


 米ぬか油や大豆油など、
 不飽和脂肪酸を多く含む油脂で石けんを作ると、
 安定性が悪く、酸化しやすくなります。

 このため、一般的には
 パーム核油とパーム油、牛脂とヤシ油等を
 混合して製造されています。

  ◎資料:主要油脂原料の脂肪酸組成
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2010/04/composition.php


 これらの油脂には、炭素数の少ない脂肪酸が含まれています。
 炭素数の少ない低級脂肪酸は皮膚に対する刺激が強く、
 防腐剤として使用されるものもあります。


 また、ナチュラル志向のスキンケアを好む人の中には、
 石けんを手作りするケースが見られますが、
 手作り石けんはコールドプロセス(加熱しない油脂鹸化法)で
 作られることが多く、アルカリ分を少なくして製造するため、
 未反応の油脂(遊離脂肪酸)が残留しやすいという問題があります。






 ▼こんな研究報告があります


  ◎奈良教育大学・内田惠美子教授
   「皮膚に優しい衣服のための基礎研究
    -培養皮膚を用いた衣服の安全性確認-」
   http://near.nara-edu.ac.jp/bitstream/10105/835/1/20090128-2.pdf


 これは、洗濯洗剤、柔軟剤、消臭剤、蛍光増白剤、
 ドライクリーニング溶剤の皮膚一次刺激性についての研究報告です。

 以下、重要と思われる部分を抜粋します。
 (※)は牛田の補足コメントです。


  +------------------------------------------------------------+

  ●洗濯洗剤に関しては、
   脂肪酸(Soap)では炭素数が12から18のものが、
   LAS(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)では
   炭素数10から14のものが洗浄に優れていると言われており、
   最も衣類の洗浄剤として使われているものが、
   皮膚一次刺激性が強いといえる。
   この点から使用上では注意が必要である。(P20)

  +------------------------------------------------------------+

  ●陽イオン界面活性剤...陽イオン界面活性剤では、
   陰イオンや非イオン界面活性剤で皮膚一次刺激性が
   陰性であったアルキル基の炭素数が16であっても、
   低い細胞生存率を示し、皮膚一次刺激性は陽性となった。

   この細胞生存率の低さは、
   陽性イオン界面活性剤の殺菌性や消毒効果を担っており、
   消毒剤として応用されている所以である。(P20)


  (※牛田注)
   陽イオン界面活性剤は、柔軟剤としても使用されています。

  +------------------------------------------------------------+

  ●柔軟剤...
   抗菌成分を付加していない柔軟剤は
   濃度が5%で約40%の細胞生存率であり、
   濃度が50%では細胞生存率は10%まで低下している。

   抗菌効果を謳っているほうは
   1%濃度で細胞生存率が20%まで低下しており、
   5%では細胞生存率は5%以下となり、皮膚一次刺激は大きい。

   柔軟剤の場合、直接原液が布に吸着することはなく、
   標準使用量は0.01%から0.02%であり、
   さらに、すすぎ過程があるため、
   実際には皮膚-の一次刺激は小さいと考えられる。(P25)


  (※牛田注)
   柔軟剤は、すすぎ過程で流されないようにできています。
   流れてしまっては柔軟効果を発揮できないからです。
   読者のみなさんはよくご存知のことと思いますが。

  +------------------------------------------------------------+

  ●消臭剤...
   市販消臭剤には、その成分の詳しい記述がないので
   刺激物質が何かは特定することはできないが、スプレー式で、
   消臭剤の原液が直接布に吹き付けられ、すすぎもないため、
   場所によっては100%の成分が直接肌に接触する可能性が高く、
   綿布の場合、その原液を滲みこませたときでは細胞生存率が
   50%以下となっており、皮膚一次刺激性は陽性となる。(P26)

  +------------------------------------------------------------+

  ●蛍光増白剤...
   毛・ナイロン繊維用であるWPLは、
   50%細胞生存率を与える添加濃度は0.5%である。
   この主成分が、 7-置換アミノクマリン誘導体の
   硫酸塩であるため、細胞生存率が低いのであろう。

   綿およびポリエステル用では
   1%添加濃度でも細胞生存率の低下は認められなかった。(P28)

  +------------------------------------------------------------+


  ●ドライクリーニング溶剤...
   皮膚一次刺激性は繊維によって著しく異なる。
   石油系ベンジンでの結果は、綿、毛、ポリエステル、
   アクリル布では綿布が最も細胞生存率の低下が大きく、
   ついでアクリル布であった。

   パークロルエチレンにおいては毛布において
   最も細胞生存率の低下が見られたが更なる検討が必要である。

   水不溶性の被験物質においては
   暫定法で定められた人工汗液では
   繊維から皮膚に十分に移行しないと考えられたが、
   今回用いたグリセリンや非イオン界面活性剤では
   その効果は見られず、オリーブ油などさらに検討が必要である。

   暫定法での人工汗液でもある程度皮膚への移行は認められた。

   いずれにしても、
   繊維への残留溶剤によって起こるトラブルであり、
   最近はその日の内にクリーニングを仕上げてくれる店もあるが、
   クリーニングされた衣類は十分乾燥してから着用する注意が
   必要であり、消費者への啓蒙が必要である。(P33)

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 ▼いかがでしたか? 白木さん。


 「衣服の安全性について
  研究されている方がいらっしゃるんですね。

  日常、何気なく使っているものの中に、
  どれだけ刺激になりうるものがあるか。
  あらためて実感しました」


 さて。
 今回は、炭素数が12以下は皮膚に刺激がある、
 ということが分かりました。

 次回は、炭素数が14以上の脂肪酸の特徴を解説して、
 皮膚常在菌が皮脂の分解過程で脂肪酸を作っているお話を。

 久々に"菌"の登場です。

 常在菌が作っている
 脂肪酸の炭素数はいったいどうなっているのでしょうか?
 お楽しみに。




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