メールマガジン「秘密の皮膚科学」
2013年03月12日配信
第351号 かぶれる?『過剰な皮脂分泌』の秘密
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2013/03/12━☆
健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと!
「秘密の皮膚科学」
第351号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
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みなさん、こんにちは。
シニアフェローの牛田専一郎です。
「だんだんと暖かくなってきましたね~。
Tゾーンがテカテカしてくると
春が来たなぁって感じます......」
フェローからも、
白木さんと同じように
皮脂が気になるという声が。
とくに男性の方から
皮脂でかぶれる、吹き出物ができる
などのご相談をいただいています。
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── かぶれる? ──
『過剰な皮脂分泌』の秘密
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▼皮脂に悩む男性の声
┌────────────────────────────
|
| つい先日、肌の色が普段より濃く
| 少し赤みがかっていると感じました。
|
| 石けん洗顔をやめて水・お湯洗顔に切り替えて以来、
| こんなことは初めてだったので少し驚きましたが、
|
| "ぬるま湯洗顔でも過剰な皮脂が肌に残っていて、
| その皮脂が酸化したことでこんな事になったのでは?"
| と考えました。
| (20代・男性)
|
└────────────────────────────
┌────────────────────────────
|
| 私は暑いと皮脂が結構出ます。
| 以前よりも大量ではないと思いますが、
| それでも体が温かくなるとじんわりと皮脂が出てしまい、
| 鼻は、毛穴ごとに丸く浮き出ます。
|
| そして、そうなると、たいていニキビが出来てしまいます。
| 皮脂や汗がニキビに直接なるわけではない、
| と理解しています。
|
| しかし、今はニキビが出来てしまう現状にあり、
| さらに接触している原因を見つけられずにいます...
|
| そこで質問です。
| 皮脂が気になるようなら
| ペーパータオルで拭った方がよいですか?
| (30代・男性)
|
└────────────────────────────
自分の皮脂でかぶれる、
きちんと洗い流さないとトラブルの原因になる、
と思っている方は多いようです。
皮脂については
以前にも取り上げたことがありますが、
専門用語も多く、理解しにくい内容だったかもしれません。
☆第233号 14以上は?『脂肪酸と菌』の秘密
http://hisesshoku-derm.com/archives/2010/04/23314.php
今回は皮脂と脂肪酸について、
少しやさしく解説したいと思います。
▼肌は皮膚常在菌に守られている
233号に
「皮脂の脂肪酸が皮膚に刺激を加える」
ということを書きましたが、
少し言葉が足りませんでした。
結論からお話すると、
過剰な皮脂分泌は肌トラブルの原因にはなりません。
皮脂の状態では
脂肪酸が遊離しているわけではないからです。
皮膚のうえには約1兆個とも言われる常在菌が住み、
汗や皮脂を栄養源として外来性細菌の侵入を防いだり、
皮脂膜を弱酸性に保つことで
悪性菌の繁殖を防いだりしています。
皮膚常在菌のマラセチア属は、皮脂を分解して
オレイン酸やステアリン酸などの脂肪酸を産生しています。
確かにこの脂肪酸自体は
皮膚にとっては刺激物質ですが、
刺激作用を発揮する以前に
それを利用する菌が存在しており、
皮膚のうえでは複雑な共生関係が築かれています。
肌は皮膚常在菌に守られていますので、
皮脂がたくさん出ても
それが肌のトラブルにつながることはありません。
▼皮膚常在菌のバランスが崩れるとき
「皮膚常在菌って
やっぱり頼もしい存在なんですね~!」
ええ。
ただし、
皮膚常在菌が頼もしい働きをするのは
そのバランスが保たれている場合のみ、です。
皮膚常在菌のバランスが崩されると
皮膚は正常なバリア力を保てなくなります。
「どんなときに
バランスが崩れてしまうんですか?」
たとえば、常在菌が"殺菌"されたとき。
タンパク質を変性させる
界面活性剤などの一次刺激性物質は
常在菌を殺菌してしまいます。
抗菌剤や除菌スプレーなどのように
もともと殺菌を意図したものだけでなく、
化粧品や柔軟剤に使われるものにも
同じ作用があることが分かっています。
また、脂肪酸由来の
界面活性剤を使用した洗剤や石けんなども
皮膚常在菌の活動に影響を及ぼします。
▼2つの顔を持つ「脂肪酸」
前述のとおり、
皮膚常在菌は脂肪酸を産生しています。
悪者のようなイメージがありますが
脂肪酸は肌に必要なものなのです。
皮膚常在菌が産生する脂肪酸は
洗剤や石けんから遊離する脂肪酸と同じ、
刺激物質でもあります。
「肌に必要なものでありながら
肌に刺激を与えるものでもある、
というわけですね。
なんだか不思議......」
脂肪酸をエサにする
皮膚常在菌がいるくらいなのだから
肌に石けんや洗剤の遊離脂肪酸が残留しても
問題ないのでは?
と思う方もいるかもしれませんが、
皮膚の常在菌の共生関係は複雑で微妙なものです。
精妙なバランスの上に成り立ち、
それ自体で完結している常在菌の共生関係に
人為的に何かを加えたり引いたりすることはできません。
常在菌の共生関係が崩れて、脂肪酸が消費されないと
脂漏性皮膚炎や脂漏性湿疹を発症する、
といわれています。
・常在菌を活性させる
・善玉菌を育てる
などと謳った化粧品もありますが、
肌に何かをつけて
これらが実現することはありえないのです。
▼まとめ ~ ベタつくときは水で洗顔を ~
今回は、久しぶりに
皮膚常在菌のお話をしました。
「牛田さん、
冒頭でご紹介した質問へのお答えは?」
ああ、そうでした。
皮脂がたくさん出るときは
ペーパータオルで拭ったほうがよいか、
というお問い合わせでしたね。
またまた結論からお話すると、
【そのまま放っておいて大丈夫】。
皮脂がたくさん出ていても
肌トラブルにつながることはありません。
ベタついて気持ち悪いときは
水で洗顔しましょう。
洗浄剤を使わなければ、
何回洗顔しても問題ありません。
洗顔ができないときは
濡れたタオルで拭くとよいですね。
これから気温が高くなっても
"何もつけない生活"を続けましょう。
そのうちに
過剰な皮脂分泌はなくなっていきます。
次回は
『トラブルが治まらないときの
原因の見つけ方』についてお話します。
どうぞお楽しみに!
☆質問・疑問などがありましたら、
お気軽にどうぞこちらへ。
→→ http://hisesshoku-derm.com/archives/01about/info.php
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