バックナンバーメールマガジン「秘密の皮膚科学」
2023年12月19日配信
知識とモラル?『飲むだけで痩せる薬』の秘密 | 第779号
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2023/12/19━☆
健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと
「秘密の皮膚科学」
第779号 発行者: シニアフェロー 牛田専一郎
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みなさん、こんにちは。
シニアフェローの牛田専一郎です。
今日は皮膚から離れて医療のお話。
「飲むだけで痩せる」という薬です。
「私も飲むだけでラクして痩せたい」
白木さん......。
最近ニュースでも耳にしますね。
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知識とモラル?
『飲むだけで痩せる薬』の秘密
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▼魔法の薬
ところで白木さん。
飲むだけで痩せる薬がある、という
お話は聞いたことがありますか?
「聞いたことあります!
食事制限、運動なしで痩せられるって
気になりますよね」
主に「リベルサス」という医薬品が
美容クリニックで処方されたり、
オンライン診療で安く販売されたりしていますが。
これは「GLP-1受容体作動薬」といって
本来は糖尿病の治療薬です。
▼糖尿病の治療薬?
「GL......?糖尿病......」
GLP-1はGlucagon Like Peptide-1(グルカゴン様ペプチド-1)
という消化管ホルモンで、小腸や大腸に存在しています。
消化管の中に食べ物が入ってくると、
小腸からGLP-1が分泌されすい臓に運ばれます。
運ばれたGLP-1は、すい臓に働きかけて、
インスリンの分泌を促します。
分泌されたインスリンは、血中のブドウ糖を
細胞内に取り込み、結果的に血糖値を低下させています。
「ふ~ん。それでどうして痩せるんですか?」
他にも胃の消化運動を遅らせることで
食後の血糖値の上昇を抑えたり、中枢神経系に働き
食欲抑制作用を介して体重を減少させるのです。
リベルサスはこのホルモンに似た作用を持っています。
これまでGLP-1受容体作動薬は皮下注射しかありませんでした。
リベルサスは糖尿病の治療にとって、画期的な経口薬となりました。
▼問題は
糖尿病の治療としては保険適用となりますが、
美容や減量目的での使用は自由診療となります。
「それでも飲むだけで痩せられるなら
手軽で安全な気がしますが」
「副作用が少ない」といった訴求をしている
広告もありますが、GLP-1製剤には
急性すい炎などの副作用があるんですよ。
また、糖尿病でない人がリベルサスを使用すると、
血糖値が過度に下がる危険性があります。
深刻な場合、低血糖症状を引き起こし、昏倒や意識喪失を
引き起こす可能性もあるようです。
「でもあまり副作用の報告は見かけないような......」
ええ。
本来の糖尿病治療ではなくダイエット目的の場合、
医薬品の適応外使用になるため、報告されにくいのです。
また、自由診療の場合、
「自己責任で診療を行うこと」に同意を取る機関も
少なくありません。
「報告しにくい状況があるんですね」
さらに、ダイエット目的で使用して重大な副作用が
発生しても、医薬品の適切な使用目的外となるため、
医薬品副作用被害救済制度の対象外となってしまいます。
▼治療の現場では
経口薬だけでなく、皮下注射のGLP-1製剤も
美容目的での使用が増えているようです。
その結果、糖尿病の患者さんへの薬剤供給不足が
問題となっているようです。
日本医師会が注意喚起を行っています↓
「私たちが知識を持っておらず
安易に飛びついてしまうことも問題ですね」
その通りですね、白木さん。
みなさんはどう思われましたか?
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