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2024年01月10日配信

増加中?『子どもの手荒れ』の秘密 | 第781号

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2024/01/10━☆
    健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと

           「秘密の皮膚科学」

    第781号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
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 みなさん、こんにちは。
 シニアフェローの牛田専一郎です。


 手荒れのご相談が増える時期ですが、
 子どもの手荒れも増えています。


 「小さな子どもの場合、皮膚生理が大人と
  違うんでしょうか」


 今日は子どもの手荒れの原因を探ってみましょう。

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             増加中?

          『子どもの手荒れ』の秘密

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 ▼子どもの皮膚の特徴?

 コロナ禍以降、アルコール消毒や石けんでの
 手洗いの頻度が増えて、手荒れが目立つ
 子どもが増えました。


  「手の甲が切れたり、赤くなってひび割れて
  いたりする子もよく見かけますよね」


 ええ。
 特に幼児の場合、そうなると手洗い自体を
 いやがってしまうこともあります。


 「よく子どもの皮膚は薄くて
  バリア力が未熟、と聞きますが
  そのせいですか」


 子どもは大人に比べて身体が小さいですから、
 相対的に皮膚が薄いのは当たり前ですね。

 だからといって
 皮膚の機能が未熟ということはありません。
 生きていくための皮膚生理はちゃんと機能しています。

 ちなみにこれは新生児でも同じです。

 赤ちゃんのうちから保湿をしないとアトピーになる、
 という情報もありますが、乳児も皮膚生理を
 妨げないようにしましょう。


 「う~ん。子どもの手が荒れやすいのは
  なんででしょうか」


 もちろん子どもでも肌の強さには
 生まれつきの個人差はありますが。

 子どもの場合、石けんを使ったとき
 すすぎ残しが多いということが考えられます。

 さらに、感染症対策で手洗い指導がしっかりされているため、
 石けんや消毒の使用頻度が高くなっています。

 タンパク変性力や脱脂力の強い消毒液や石鹸を
 頻繁に使って、手が荒れた状態になると、その傷からかえって
 ウイルスや細菌が侵入しやすくなってしまいます。


 「困りましたね......」





 ▼ガイドラインは


 文部科学省の「学校における新型コロナウイルス感染症に
 関する衛生管理マニュアル(2023.5.8~)」には
 こんな記載がされています。


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 【手洗い等の手指衛生の指導】(抜粋)

 登校時や外から教室等に入る時、
 トイレの後、給食(昼食)の前後など、
 こまめに手を洗うことが重要です。

 手洗いは 30 秒程度かけて、流水と石けんで
 丁寧に洗います。また、手を拭くタオルやハンカチ等は
 個人持ちとして、共用はしないように指導します。

 なお、手指用の消毒液は、流水での手洗いが
 できない際に、補助的に用いられるものですので、
 基本的には流水と石けんでの手洗いを指導します。

 また、石けんやアルコールを含んだ手指消毒薬に
 過敏に反応したり、手荒れの心配があったりするような
 場合には、流水でしっかり洗うことを指導するなどの
 配慮を行います。(引用p.8)

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 「ふ~ん......
  手荒れのリスクがあるときは流水での
  手洗いも可なんですね」


 はい。配慮がされていますね。

 東京都健康安全研究センター微生物部が
 調査した「手洗いによるウイルス除去効果の検討」
 (2006年)という論文があります。

 それによると流水のみですすぎ洗いを
 15秒した場合でもウイルスの感染価、遺伝子量ともに、
 約100分の1(約1%)に減少することが
 明らかになっています。





 ▼対策は?


 手洗い指導がされている学校や保育園、幼稚園でも
 ガイドラインでは石けんの使用は必須ではありません。

 ただ、どうしても使用しないといけない場面が
 あるかもしれません。

 家庭では流水のみで15秒~30秒洗うなど
 できるだけ使用頻度を減らせるといいですね。

 荒れてしまった場合は、
 大人と同じように白色ワセリンをつけて
 皮膚を保護するようにしましょう。




 ☆ご相談・ご質問など、お気軽にどうぞ
  https://jstcd.or.jp/contact/

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