バックナンバーメールマガジン「秘密の皮膚科学」

2025年03月04日配信
どっちがいいの?『石けんと合成洗剤』の秘密 | 第837号
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2025/03/04━☆
健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと
「秘密の皮膚科学」
第837号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆
みなさん、こんにちは。
シニアフェローの牛田専一郎です。
4号続けて、治療現場と一般市場の
非接触生活の現状分析をしてきました。
「肌の弱い人には厳しい現状でした......」
引き続き、洗濯洗剤の市場調査と分析をします。
お付き合いください。
☆-------------------------------------------------------☆
どっちがいいの?
『石けんと合成洗剤』の秘密
☆-------------------------------------------------------☆
▼情報が入り乱れて?
洗濯洗剤市場を調査していて牛田が気になったのは、
石けんは環境にも肌にもやさしいという情報が
以前より増えた印象があること。
石けんを含む界面活性剤について
今一度調査してみました。
「ネットで調べると、『天然由来だから安心』とか
いろいろな洗濯洗剤があって何が正しいのか
わからないんですが」
そうですね、白木さん。
見極めるのは難しいでしょう。
洗濯洗剤をめぐってはこんな構造がありますね。
◇「石けん」は「合成界面活性剤」より肌や環境にやさしい
◇「植物由来」の界面活性剤は
「石油由来」よりも肌や環境にやさしい
これは石けんメーカーや
植物油脂由来の界面活性剤を
使用している洗剤メーカーの主張です。
洗濯洗剤に広く使用されているAE
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)も
石油由来と植物油脂由来があるのです。
「石油系は残留性が高い、という
情報を見ると心配になります」
そうですね。
こうした情報はメーカーのマーケティング的な
要素が強いと思います。
▼いつから?界面活性剤の歴史
まずは石けんを含む界面活性剤の
歴史を見てみましょう。
「界面活性剤の歴史?
考えたこともなかったです」
普通はそうですよね。
歴史を見ることで、どんなふうに
発達、普及していったのかわかりますね。
石けんの歴史は紀元前2800年にさかのぼり、
古代バビロニア人に使用されていたと考えられています。
中世のヨーロッパではフランス、スペイン、イタリアを
中心として石けんが作られていました。
当時はまだ石けんは高級品。
お金のある一部の人しか使えなかったようです。
ヨーロッパ、アメリカで固形石けんが
広く手に入るようになったのは18世紀後半からでした。
この時期に石けんの使用が広まったのは、
衛生と健康の関係性を伝える広告キャンペーンに
よるものだったそうです。
「広告ってすごいですね」
そうですね、白木さん。
洗剤が登場したのは第一次世界大戦の1916年頃。
石けん原料の不足により、需要に見合うよう
メーカーは合成洗剤の開発を推奨されたからでした。
1950年代にはアメリカでは合成洗剤が
従来の石けん製品に取って代わりました。
▼日本の場合は
「ふ~ん。日本ではどうだったんですか?」
日本では第二次世界大戦後、アメリカの
P&G社が開発した、陰イオン界面活性剤の
ABSが広く普及しました。
化粧品・浴用以外ではすべてABSが
石けんに取って代わったそうです。
「洗濯などの分野ということですね」
ええ。
1960年、全自動洗濯機の普及に伴い、
合成洗剤の使用量も大きく伸びました。
ですが、ABSによる河川汚染や生態系毒性が
問題となるようになったのです。
当時はまだ下水処理設備が不十分であったため、
生活排水がそのまま河川に流れてしまったのですね。
そのころから、「石けん推進運動」が始まったようです。
石けんメーカーが合成洗剤の危険性を訴え、
石けんの安全性を強調するキャンペーンを広く行いました。
自社製品の購入につなげる目的もあったでしょう。
「なるほど......それからどうなったんですか?」
界面活性剤の構造が直鎖型なら
分解しやすいということで直鎖型ABS(LAS)への
転換が始まりました。
ところがこちらも生態系への毒性があり、
1980年代にはLAS単独の洗剤は減り、
代わりに非イオン系界面活性剤(AEなど)が
普及するようになったのです。
「牛田さん、気になるんですが。
海外では石けん推進運動は起きなかったんですか?」
そのようです。
情報を探してみましたが、
海外では石けん推進運動はまったく起きなかったようです。
※参考文献
Simple Science: The Difference Between Soap and Detergent
https://www.nycoproducts.com/resources/blog/simple-science-the-difference-between-soap-and-detergent/
水環境における界面活性剤の現状 埼玉県
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/21499/15216.pdf
▼普及の背景に
「石けんや洗剤の普及の背景に
時代やメーカーの思惑があることが
わかりました」
そうですね、白木さん。
そういう情報を取りに行くのは
なかなか難しいかもしれません。
「で、結局石けんと合成洗剤、
どちらが肌や環境にいいんですか?」
それは次週にいたしましょう。
☆ご相談・ご質問など、お気軽にどうぞ
どっちがいいの?
『石けんと合成洗剤』の秘密
☆-------------------------------------------------------☆
▼情報が入り乱れて?
洗濯洗剤市場を調査していて牛田が気になったのは、
石けんは環境にも肌にもやさしいという情報が
以前より増えた印象があること。
石けんを含む界面活性剤について
今一度調査してみました。
「ネットで調べると、『天然由来だから安心』とか
いろいろな洗濯洗剤があって何が正しいのか
わからないんですが」
そうですね、白木さん。
見極めるのは難しいでしょう。
洗濯洗剤をめぐってはこんな構造がありますね。
◇「石けん」は「合成界面活性剤」より肌や環境にやさしい
◇「植物由来」の界面活性剤は
「石油由来」よりも肌や環境にやさしい
これは石けんメーカーや
植物油脂由来の界面活性剤を
使用している洗剤メーカーの主張です。
洗濯洗剤に広く使用されているAE
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)も
石油由来と植物油脂由来があるのです。
「石油系は残留性が高い、という
情報を見ると心配になります」
そうですね。
こうした情報はメーカーのマーケティング的な
要素が強いと思います。
▼いつから?界面活性剤の歴史
まずは石けんを含む界面活性剤の
歴史を見てみましょう。
「界面活性剤の歴史?
考えたこともなかったです」
普通はそうですよね。
歴史を見ることで、どんなふうに
発達、普及していったのかわかりますね。
石けんの歴史は紀元前2800年にさかのぼり、
古代バビロニア人に使用されていたと考えられています。
中世のヨーロッパではフランス、スペイン、イタリアを
中心として石けんが作られていました。
当時はまだ石けんは高級品。
お金のある一部の人しか使えなかったようです。
ヨーロッパ、アメリカで固形石けんが
広く手に入るようになったのは18世紀後半からでした。
この時期に石けんの使用が広まったのは、
衛生と健康の関係性を伝える広告キャンペーンに
よるものだったそうです。
「広告ってすごいですね」
そうですね、白木さん。
洗剤が登場したのは第一次世界大戦の1916年頃。
石けん原料の不足により、需要に見合うよう
メーカーは合成洗剤の開発を推奨されたからでした。
1950年代にはアメリカでは合成洗剤が
従来の石けん製品に取って代わりました。
▼日本の場合は
「ふ~ん。日本ではどうだったんですか?」
日本では第二次世界大戦後、アメリカの
P&G社が開発した、陰イオン界面活性剤の
ABSが広く普及しました。
化粧品・浴用以外ではすべてABSが
石けんに取って代わったそうです。
「洗濯などの分野ということですね」
ええ。
1960年、全自動洗濯機の普及に伴い、
合成洗剤の使用量も大きく伸びました。
ですが、ABSによる河川汚染や生態系毒性が
問題となるようになったのです。
当時はまだ下水処理設備が不十分であったため、
生活排水がそのまま河川に流れてしまったのですね。
そのころから、「石けん推進運動」が始まったようです。
石けんメーカーが合成洗剤の危険性を訴え、
石けんの安全性を強調するキャンペーンを広く行いました。
自社製品の購入につなげる目的もあったでしょう。
「なるほど......それからどうなったんですか?」
界面活性剤の構造が直鎖型なら
分解しやすいということで直鎖型ABS(LAS)への
転換が始まりました。
ところがこちらも生態系への毒性があり、
1980年代にはLAS単独の洗剤は減り、
代わりに非イオン系界面活性剤(AEなど)が
普及するようになったのです。
「牛田さん、気になるんですが。
海外では石けん推進運動は起きなかったんですか?」
そのようです。
情報を探してみましたが、
海外では石けん推進運動はまったく起きなかったようです。
※参考文献
Simple Science: The Difference Between Soap and Detergent
https://www.nycoproducts.com/resources/blog/simple-science-the-difference-between-soap-and-detergent/
水環境における界面活性剤の現状 埼玉県
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/21499/15216.pdf
▼普及の背景に
「石けんや洗剤の普及の背景に
時代やメーカーの思惑があることが
わかりました」
そうですね、白木さん。
そういう情報を取りに行くのは
なかなか難しいかもしれません。
「で、結局石けんと合成洗剤、
どちらが肌や環境にいいんですか?」
それは次週にいたしましょう。
☆ご相談・ご質問など、お気軽にどうぞ

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