メールマガジン「秘密の皮膚科学」

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2009年04月21日配信

第186号 生理周期の不調はなぜ起こる?『生理とお肌』の秘密(4)

 みなさん、こんにちは。
 コスメプロデューサーの牛田専一郎です。


 2月から取り組んできたテーマ、『生理とお肌』。

 シリーズ第4回を迎える今回で、
 いよいよ完結いたします。

  ◇生理とお肌、両者には関係があるのか?
  ◇関係があるとすれば、影響を与えているのは何か?
  ◇影響を受けやすいのは、どんな人?


 ちょっぴり......いや、かなり?
 苦心して、分かりやすくしたつもりです。



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      ―― 生理周期の不調はなぜ起こる? ――

         『生理とお肌』の秘密(4)

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 ▼まずはおさらいから。


 本題に入る前に、今までにお届けした
 『生理とお肌』の内容を振り返りましょう。



  ☆第183号 5つのキーワード?『生理とお肌』の秘密(1)
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2009/02/183.php

   これまでに、牛田が『生理とお肌の関係』に言及しなかったのは、
   【生理によってお肌は影響を受けないから】。

   シリーズ第1回では、基礎知識として
   生理に関する5つのキーワードを解説しました。



  ☆第184号 運動能力も低下しない?『生理とお肌』の秘密(2)
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2009/03/184.php

   生理周期(ホルモンの変化)は、
   運動能力にもお肌にも影響を与えません。

   生理によるストレスの正体は、出血そのもの。
   脳と生理の関係は、脳と皮膚の関係にも通じるところがあります。



  ☆第185号 女性スポーツとの関係は?『生理とお肌』の秘密(3)
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2009/04/185.php

   管理栄養士・健康運動指導士の阿部瑞恵さんから
   ◇生理周期(ホルモンの変化)によって運動能力の低下はみられない、
    という説が今も変わっていないこと

   ◇大会の日程に合わせて、生理日をコントロールしている
    女性選手がいる

   との情報が得られました。

   阿部さんからいただいた情報から、
   生理に関する男性の理解の低さの指摘を感じるとともに、
   翻って、女性スポーツ選手にとって生理の存在そのものが
   ストレスになっているように感じられました。

   また、女性スポーツ選手と生理についての実情は、
   改善しなければならない課題が山積していることを
   知ることともなったのです。




 ▼牛田はなぜ"スポーツの事例"を取り上げたのか?


 「牛田さん、ひとつ質問です。
  "生理とお肌"というテーマを解き明かすにあたって、
  どうしてスポーツの事例を取り上げたんですか??」



 白木さんと同じように、どうして?
 と疑問に感じた人も多いかもしれません。


 牛田がスポーツの事例を取り上げた理由は、2つあります。

 1つ目は、
 生理周期(ホルモンの変化)が
 生命維持や基本的な身体機能にマイナスに働くことはない。
 ということを確認したかったから。

 2つ目は、
 生理の出血が、大きなストレス要因と
 なっていることを確認したかったからです。

 牛田には、
 出血が目立つ競技用ウエアーを着用する種目の選手は、
 出血そのものにストレスを感じているのではないか。
 生理日をコントロールせざるを得ないのではないか。
 という推測がありました。


 生理の解説をするにあたって、
 日常生活よりも、身体的機能を極限まで追求するスポーツの世界のほうが
 上記2つの理由をはっきりと物語ってくれると考えました。

 だから、スポーツの事例を取り上げたのです。



 「なるほど。
  その結果、牛田さんが30年来抱いてきた考えが
  思い込みではなかったことが確認できたんですね」

 
 そうなんです。
 その点では、ひと安心......の部分もあるのですが。

 しかしながら、
 阿部瑞恵さんからいただいた情報にあった

  『スポーツ活動や日常生活に支障をきたすような
   月経異常・生理痛・PMSが、出血のストレスに加えて
   更にストレスの加重を大きくしている』

 という実情には考えさせられるものがあります。




 ▼お肌と生理の共通点は"不随意"


 生理に関するホルモンは下垂体前葉から分泌されますが、
 その変化を司っているのは『視床下部』です。

 視床下部は、血液中の極微量なホルモン量を感知して
 下垂体へ促進因子・抑制因子によって指示を出しています。
 各ホルモンは生理周期に以下のように分泌されています。


 ┌――――――――――――――――――――――――――――――
 |              【妊娠しなかった場合の生理周期】
 | 
 | 1.視床下部から下垂体へ
 |   GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌される
 | 
 |              ↓ ↓ ↓
 | 
 | 2.下垂体から卵巣へ、FSH(卵胞刺激ホルモン)が
 |   分泌され、卵胞(成熟卵)をつくる
 | 
 |              ↓ ↓ ↓
 |     
 | 3.卵胞から卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌される
 | 
 |              ↓ ↓ ↓
 |     
 | 4.卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌がピークに
 |   なったことを視床下部が感知し、下垂体へ伝達する
 | 
 |              ↓ ↓ ↓
 |     
 | 5.下垂体から卵巣へ
 |   LH(黄体形成ホルモン)が分泌され、排卵が起こる
 | 
 |              ↓ ↓ ↓
 |     
 | 6.卵胞が黄体に変化し黄体ホルモン(プロゲステロン)
 |   が分泌され、他器官に作用する。
 | 
 |              ↓ ↓ ↓
 |     
 | 7.子宮内膜への着床が無いことが下垂体へ伝達され、
 |   卵胞ホルモン(エストロゲン)・黄体ホルモン
 |     (プロゲステロン)の分泌が抑制される。
 | 
 |   子宮内膜から分泌されるPG(プロスタグランジン)の
 |     働きにより子宮が収縮し、
 |     不必要となった子宮内膜の組織がはがれ落ちる
 | 
 |              ↓ ↓ ↓
 |     
 | 8.視床下部が卵胞ホルモン(エストロゲン)の
 |   分泌量の低下を把握し、次の周期へ下垂体に1の指示を出す
 | 
 └――――――――――――――――――――――――――――――


 PG(プロスタグランジン)は、
 臓器の血管を収縮させたり、炎症を強くする働きがあるため
 生理時には下腹部痛や腰痛、頭痛、胃痛、肩こり、
 しびれ、吐き気などの症状を起こすという説もあります。

 ただし、まったく影響を受けない人がいるのも事実です。


 視床下部は、血液中の極微量なホルモン量を感知しながら
 体内時計のような精妙なメカニズムによって、
 1~8の生理周期を、約1ヶ月間で本人に自覚されないまま
 何十年もこの周期を繰り返しています。

 生理周期を司っている視床下部は脳幹部にあります。
 脳幹部は不随意の臓器を司っていましたね?

 読者のみなさんはご存知の通り、脳幹部は
 大脳の情動の変化にも、体調の変化にも、影響を受けてしまいます。

 第184号で、脳と生理の関係は
 脳と皮膚の関係にも通じるものがある、とお話しましたが。
 http://hisesshoku-derm.com/archives/2009/03/184.php


 不随意の臓器である皮膚が
 「強い人」と「弱い人」がいるように、
 不随意の臓器が刻む生理周期によって、生理痛やPMSの症状が
 「強く現れる人」と「何も現れない人」がいます。


 生まれつきお肌が強い人と弱い人がいるように、
 生理痛やPMSにも、症状の出やすい人と
 出にくい人がいるように感じられます。


 目に見える"皮膚"と、見えない"生理"のメカニズムを
 同様にとらえることは難しいかもしれませんが......

 同じ不随意の臓器であり、脳幹部の影響下にあるということ。

 これはどちらも、
 「心身」のストレスコントロールの方法がありそうな
 気がしてきませんか?




 ▼お肌に影響を与えているのは、「周期」ではなく「ストレス」


 エストロゲン(卵胞ホルモン)と
 プロゲステロン(黄体ホルモン)は、
 皮脂分泌や皮膚の代謝といった
 皮膚生理に影響を与えないホルモンです。

 生理周期(ホルモンの変化)は、
 運動能力や皮膚生理などの基本的な生命維持機能に
 マイナスに働いていないようです。

 そうでないと、人間は
 自然界では生き残ってこられなかったのでしょう。

 生理周期によってお肌に不調が起こる場合は、
 ホルモンの変化によるものではなく、
 生理のストレスによってお肌のバリア力が弱くなる、
 いわゆる"お肌の弱いタイプの人"であると考えられます。


 「つまり、お肌の弱い人は、
  生理によって生まれるストレスの影響も受けやすい、
  ということなんですね」




 ▼お肌に影響が出る・出ないは人それぞれ


 生理周期によるニキビや湿疹、カサつきの原因は、
 ホルモンの変化によるものではなく、
 生理のストレスによるものです。


 以下のメルマガでも取り上げましたが......

  ☆第44号 親密なカンケイ。『脳と皮膚』の秘密
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2005/09/44.php


 大脳での感動や怒り、喜びや悲しみなどの情動の揺らぎが、
 脳幹に良くも悪くもストレスを加えています。

 また、私たちを取り巻く環境は常に変化していますが、
 どんなに気温が下がろうとも、上がろうとも、
 人間の身体はホメオスタシス(恒常性)を保とうとします。

 環境の変化を感知した身体からの伝達情報によって
 ストレス情報が脳幹には加わっています。

 つまり、良くも悪くも、脳幹部は「心身」から
 ストレスに常に晒されていることになります。

 これまでもバックナンバーでお話してきましたが、
 お肌の弱い人は、心身にストレスが加わっていると
 お肌のバリア力が弱くなってしまいます。

 お肌の弱い人が「生理をストレスに感じること」
 (意識していても無意識でも)は、
 お肌に影響を与える原因になるのです。

 お肌の強い人は「生理をストレスに感じていても」
 (意識していても無意識でも)、
 お肌に影響の出ない人ということです。





 ▼あなたは"バリア力"が落ちる人? 落ちない人?


 以前、ストレスを感じるとどのような症状が出るか?
 というアンケートを行ったことがあります。

  ☆第45号 おまじない? 『ストレス』の秘密
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2005/09/45.php


 その結果、
 "ストレス症状の発現の仕方はさまざまである"
 という結論に至りました。


 『生理とお肌の関係』も同じ。
 生理痛やPMSの症状があっても無くても、
 お肌のバリア力の落ちる人と落ちない人がいるのです。


  PMSの症状が出る  →→→ お肌のバリア力が落ちる。

  PMSの症状が出る  →→→ お肌のバリア力が落ちない。

  PMSの症状が出ない →→→ お肌のバリア力が落ちる。

  PMSの症状が出ない →→→ お肌のバリア力が落ちない。


 といったように、ストレスの発現には個人差があります。

 もしあなたが、生理痛やPMSの症状が出ても出なくても
 生理周期によってお肌の不調を感じているならば
 "お肌の弱いタイプ"なのだと認識してくださいね。


 生理周期によってトラブルが起きていると感じている人は、
 第184号でご紹介したとおり、
 お肌を傷めるものとの接触を断つことによって
 解決できることが解っています。


             ・・・・・


 以上で『生理とお肌』は、ひとまず、おしまい。
 意外かもしれない視点からお届けしましたが、
 白木さん、いかがでしたか?


 「お肌に触れるものをコントロールしたり、
  ストレスを上手に逃がす方法を考えたり......。

  自分がどのタイプなのか自覚できれば、
  いろいろ対策が講じられるんじゃないかな、
  って感じました。

  まずは自分の心身をよく観察して、よく知ること!ですね」





 ★牛田への感想・コメントがありましたら、
  お気軽にどうぞこちらへ。
  http://hisesshoku-derm.com/archives/01about/info.php





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