メールマガジン「秘密の皮膚科学」

2009年04月14日配信

第185号 女性スポーツとの関係は?『生理とお肌』の秘密(3)

 みなさん、こんにちは。
 コスメプロデューサーの牛田専一郎です。


 すっかりご無沙汰してしまい
 大変申し訳ありません......。

 じ、実は......。


 「ささ、牛田さん!
  言い訳はあとにして、前回の続きを。

  "生理のストレス"の秘密が解き明かされるのを、
  みなさん待ってるんですから!」



☆------------------------------------------------------------☆

        ―― 女性スポーツとの関係は? ――

          『生理とお肌』の秘密(3)

☆------------------------------------------------------------☆


 ▼白木さんに怒られてしまったので......


 ではさっそく本題に。


 前回のメルマガで
 【生理によって運動能力の低下はみられない】
 というお話をしました。

 みなさん、覚えていらっしゃるでしょうか?

  ☆第184号 運動能力も低下しない?『生理とお肌』の秘密(2)
   http://hisesshoku-derm.com/archives/2009/03/184.php



 牛田は、30年以上も前からず~っと、
 生理周期(ホルモンの変化)は
 運動能力に影響を与えないと同時に、
 お肌にも影響を与えないと考えています。


 前回スポーツの話を持ち出したのは、
 生理周期のホルモンの変化ではなく"出血そのもの"が
 選手の大きなストレスになっていると思っていたからです。


 しかし、前回の事例はちょっと古すぎるかなと思い......。


 管理栄養士・健康運動指導士の阿部瑞恵さんに
 最近の事情はどうなっているのか問い合わせをしてみることにしました。

 ☆こちらの記事で、阿部瑞恵さんが紹介されています
  http://allabout.co.jp/gs/dietitian/closeup/CU20080403A/index3.htm




 ▼牛田から阿部さんへのお願い


 牛田は、阿部さんにこんなお話をしました。

 ◇30年以上前に、
  【生理によって運動能力の低下はみられない】
  という結論づけた論文を読んだこと

 ◇生理には出血があることと、
  生理日が自分の意志ではコントロールできないことは
  大きなストレスであると考えていること

 ◇したがって、出血が目立つ競技用ウエアーを着用する種目の選手は、
  生理日をコントロールせざるを得ないのではないかと考えていること


 それを踏まえて、以下の2点について調べていただけないだろうか。
 とお願いをしました。

 ◆「生理周期(ホルモンの変化)によって運動能力の低下はみられない」
  という説は、今も変わっていないのか?

 ◆大会の日程に合わせて生理日をコントロールしている種目があるのか?




 ▼阿部さんから、メールで情報をお寄せいただきました


 【阿部さんからのメール:その1】
 ┌――――――――――――――――――――――――――――――
 |
 |◆○○大学の陸上部のコーチに直接お話を聞いたところ、
 | そのコーチ自身が、現役時代に、ピルは飲んでいないけれども、
 | 婦人科で処方された、ホルモン剤で生理日を調節していたそうです。
 |
 | 理由は、生理痛がひどく、日常生活もきつかったため。
 |
 | 生理痛は個人差が多きく、ほとんど何も感じない人もいれば、
 | 腹痛や、貧血状態、吐き気、頭痛・・・。様々な症状があります。
 | 激痛の人もいれば、軽い痛みの人もいます。
 |
 | なので、軽い痛みの人や、何も無い人にとっては、
 | 生理中だから競技力が落ちるということは無いと思います。
 | 実際私もそうですし・・。
 |
 | ただ、激痛や吐き気がある女子選手は
 | 競技力に影響がないと言えるのでしょうか・・・。
 |
 | 私も、論文を読んでいるわけではないので、なんとも言えませんが、
 | 対象者はどのような女子選手だったのかなーー、と。
 | 
 | 《牛田注:このあと、成長期を含めた競技指導のあり方について
 |      の記述が続きます。大変残念ですが
 |      本題に戻れなくなりそうなので割愛します)
 | 
 | 
 | また、情報があれば連絡します。
 |                         阿部瑞恵
 | 
 └――――――――――――――――――――――――――――――



 【阿部さんからのメール:その2】
 ┌――――――――――――――――――――――――――――――
 |
 |◆知人の管理栄養士で、スポーツ医学関係の
 | お仕事をされていた方からの情報です。
 |
 | 伺ったお話では、月経周期のコントロールには
 | 低用量ピルが処方されているそうです。
 |
 | 低用量ピルは避妊を目的にするのではなく、
 | 月経周期をコントロールしたり、出血量の軽減により
 | 体の負担を減らすことを目的に使わることが多いそうです。
 |
 | そして、女性スポーツには、選手に
 | 月経に対してのサポートがあるそうです。
 | サポートでは数か月前からスポーツ医と話し合って
 | 月経周期を試合にぶつからないようにするそうです。
 |
 | この方は、腹痛がひどかったり
 | 出血で試合に支障が出ると思われる人には、婦人科女医で
 | スポーツ医の方に相談することを勧めているそうです。
 |
 | いずれにしても、医師の処方が必要ですし、
 | 月経周期をみていくので数か月前からのサポートになるそうです。
 |
 | ドーピングの問題もあり、鎮痛剤は制限されているそうです。
 |
 | 女性のためのスポーツ会議があることもご教示いただきました。
 | http://www.jws.or.jp/2005/summit2005_report.html
 |
 |
 | 最後に、
 | 「女性だけが腹痛や頭痛に苦しみながら
 |  スポーツをするのは果たして正しいのか?」という考えや
 |
 | 「自分のホルモンバランスをうまくコントロールすることができる
 |  ということを知ることは女性スポーツを支える上で一つの選択になる」
 |
 | また「男性のトレーナーの無理解で苦しんでいる選手や
 | 生理痛の激しい選手がいるということを知る必要があるかもしれません」
 | とのコメントもいただきました。
 | 
 └――――――――――――――――――――――――――――――



 【阿部さんからのメール:その3】

 ┌――――――――――――――――――――――――――――――
 |
 |◆知人の医学博士で
 | 月経周期について研究している方からの情報です。
 |
 | ----------------以下、メールの抜粋です--------------------
 |
 | 最近、月経周期とトレーニングとの関係について
 | 研究に取り組んでいて、
 | 色々と調べているので、ご連絡差し上げました。
 | 
 | 月経周期は、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)
 | の分泌量の変化によって
 | 月経期(生理中)、卵胞期(生理後)、
 | 排卵期(生理開始から約14日後)、黄体期(生理前)の
 | 4つのフェーズに分けることが出来ます。
 | 
 | とくに黄体期に心身ともに不調をきたすことが多く、
 | この不調はPMS(月経前症候群)として、
 | 定義づけがなされています。
 | 
 | 実際にピルを用いて、コンディショニングを調整することは
 | よくあるようです。下記の文献を参考になさってみてください。
 | 
 | 臨床スポーツ医学 2007年9月号
 | 特集 女性アスリートの心身におけるコンディショニング
 | 
 | また、月経周期とperformanceに関する研究は、結構あります。
 | 
 | 私は、筋肥大や筋力との関係を中心に調べているので
 | 情報が偏っているかもしれませんが、筋力に関しては、
 | 排卵期に高いという結果が現在のところ支持されています。
 | 
 | 排卵期はエストロゲンが高く、
 | プロゲステロンが低いフェーズですが、
 | エストロゲンが筋の収縮特性に影響をあたえているのではないか
 | という見解がなされています。
 | 
 | しかし、実際にはまだよくわかっていません。
 | また、VO2maxに関しては、影響なしという報告がほとんどです。
 | 
 | 答えになっているのかわからないですが、
 | 私が色々と文献を読んだ感じでは、
 | 「生理中でも競技力は落ちない」と、一概には言えないと思います。
 | コンディショニングを調整するうえで、
 | 月経周期は大切な要因だと感じます。
 | 
 | しかし、現場のコーチやトレーナーには、男性が多く、
 | もし、周りに女性が栄養士しかいない場合には、
 | 唯一相談できる大切な存在となるのではないでしょうか?
 | 
 | 私事ですが、月経に関する主観的なことについて、驚くほど
 | 男性にはわかってもらえないことが多いです(研究者でも)。
 | 
 | 月経周期とコンディショニング。
 | 食事に直接関係がないといえば、それまでですが、
 | 栄養士はヒトのからだについて熟知している専門家だと思います。
 | 周りに女性がいない場合には、ぜひ相談にのってあげてくださいね。
 | 
 | ----------------以上、メールの抜粋でした------------------
 | 
 └――――――――――――――――――――――――――――――
               ※牛田注 VO2max(最大酸素摂取量)




 ▼女性スポーツと生理をめぐる諸問題


 阿部さんの知人の方からご紹介いただいた
 「女性のためのスポーツ会議」のパネルディスカッション第2部に
 こんな記述がありました。

 http://www.jws.or.jp/2005/summit2005_report.html


 ◆女性が月経周期を有すること、
  スポーツ現場での月経に対する理解の現状について、
  男性指導者の月経に対する理解の低さを指摘し、
  月経異常の放置が、女性の「生(命)」に関わる問題が生じるという
  認識が必要だということも述べた。

 ◆女性スポーツ選手特有の問題として、摂食障害、月経異常、骨粗鬆症
  といった女性アスリートの3つの特徴について触れ、
  過度のトレーニングへの警鐘を鳴らし、
  将来を見据えた指導が大切であるとした。

 ◆スポーツ活動に影響を及ぼす月経異常については、
  そうした体調の変化をコンディショニングに活かす方法として、
  基礎体温の活用を勧め、月経痛がひどい場合は
  月経周期のコントロールを積極的に行っていくよう示唆した。

 ◆思春期の選手たちに必要な配慮として、
  「結果を出すのは今しかない」といった無理な追い込みや指導は避け、
  指導者と選手がよく相談した上で、長期的なビジョンを立て、
  息の長い「かしこい」選手を育てることが重要であるとした。

 ◆選手とコーチ、医師の三者が連携を図ることが重要である。

 ◆周りの選手はほとんどが無月経だったとし、
  今でもその状況は変わらないと。

 ◆また、アテネオリンピックでの日本選手団の公式ウエアが
  白だったことに言及し、女性にやさしいスポーツ界を
  構築することが必要であると指摘した。


 以上、阿部さんからいただいた情報から
 女性スポーツ選手と生理についての実情は、
 改善しなければならない課題が山積していることを
 知ることとなりました。




 ▼阿部さんからいただいたメールから......


 牛田からお願いをした2つの依頼について
 次のような情報を得られました。


 ◎「生理周期(ホルモンの変化)によって運動能力の低下はみられない」
   という説は、今も変わっていないのか?

  →「月経周期とperformanceに関する研究では、
    排卵期が高いという説が支持されているが、
    しかし、実際にはまだよくわかっていない。
    また、VO2maxに関しては、影響なしという報告がほとんど。」


 ◎大会の日程に合わせて生理日をコントロールしている種目があるのか?

  →「女性スポーツには選手に月経に対してのサポートがある。
    サポートでは数か月前からスポーツ医と話し合って
    月経周期を試合にぶつからないようにする。」


 牛田の思い込みでないことが確認できました。


 それにしても、
 生理に関する男性の理解の低さの指摘を感じるとともに、
 翻って、女性スポーツ選手にとって生理の存在そのものが
 ストレスになっているように感じました。


 阿部さん、それぞれの専門家の方への取材、
 そして、貴重な情報をありがとうございました!



 『生理とお肌』の関係は、
 まだ続きます......。

 次回をどうぞお楽しみに!



 ★牛田への感想・コメントがありましたら、
  お気軽にどうぞこちらへ。
  http://hisesshoku-derm.com/archives/01about/info.php




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