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2025年04月15日配信

身近な事例?『身の回りのタンパク変性』の秘密 | 第843号

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2025/04/15━☆
    健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと

           「秘密の皮膚科学」

    第843号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
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 みなさん、こんにちは。
 シニアフェローの牛田専一郎です。


 このメルマガではおなじみの「タンパク変性」ですが。


 「皮膚がタンパク変性を起こして傷むって聞きますが、
  イメージしづらいんですよね......」


 では、身近な事例を見ながら
 一緒におさらいしましょうか。

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           身近な事例?

       『身の回りのタンパク変性』の秘密

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 ▼どうやって人体は維持されている?


 そのお話をする前に、まずは人体の細胞の
 話をしましょう。

 人体は約60兆個の細胞からできており、
 (40兆個という説もあります)
 毎日1~2%(約1兆個)の細胞が
 ミリ秒単位で入れ替わっていると言われています。

 生まれる細胞の数と死ぬ細胞の数が
 正確に釣り合っているから、安定した姿を
 保っていられるのですね。


 「人体ってすごいですね!」


 そうですね、白木さん。
 この細胞の入れ替わりにはタンパク質の
 分解と合成が関わっています。


 「どうしてタンパク質を入れ替える
  必要があるんですか?」


 タンパク質は変性するとすぐに機能不全になるため、
 次々と新しい細胞に入れ替える必要があるのです。

 役目を終えたタンパク質は分解され、
 新しいタンパク質の材料になるなど
 効率良くリサイクルされています。

 完全に入れ替わる期間は、
 タンパク質の種類で異なりますが、
 一般的には次のように言われています。


 皮膚:約1ヵ月
 血液:約4ヵ月
 骨:約3年(もっと早いという説もあります)
 胃、小腸の粘膜:3日
 大腸:10日


 「胃腸の粘膜は速いですね!」


 そうですね、白木さん。

 食べ物を消化吸収する重要な働きがあることに加え、
 胃酸や腸液にさらされる過酷な環境、
 ウイルスや細菌などの感染のリスク、があることから
 入れ替わるのが速いそうです。





 ▼もっと身近な例は?


 「タンパク質の変性」とは、
 タンパク質中の水素結合やジスルフィド結合が切れて、
 立体構造が不可逆的に変化し、タンパク質としての
 機能が失われることです。


 「なんだかよくわからないんですが......。
  身近に起きているんですか?」


 はい。
 生活の中で経験していることも多いんですよ。

 例えば......


 ◇卵を加熱すると目玉焼きになる
 →タンパク質の熱変性

 ◇肉を焼くと硬くなる
 →タンパク質の熱変性

 ◇アヒルの卵に石灰などを混ぜた粘土を塗りつけピータンを作る
 →アルカリによるタンパク変性

 ◇美容院でパーマや縮毛矯正をする
 →毛髪のタンパク質の構造を変えるアルカリ変性

 ◇ワイン、お茶、渋柿を口にしたとき苦味を感じる
 →タンニンの結合によるタンパク質の収れん作用


 「意外といろいろあるんですね!」


 そうなんです、白木さん。
 タンパク質を変性させるものの中に、
 じつは界面活性剤もあります。

 接触によって皮膚のタンパク質が変性し、
 角質層の本来の役目を失ってしまうのです。





 ▼皮膚のタンパク質は修復はできる?


 皮膚の角質層は死んで角化した細胞が重なって
 防壁のような役割をしています。

 ここに先程挙げたタンパク質を変性する物質が
 接触すると、角質層の接着力が弱まって、
 異常剥離を起こしカサカサしてしまいます。

 ☆角質のかさついた状態↓
  https://hisesshoku-derm.com/archives/2010/09/kasatsuki.php


 「でも人体のタンパク質は傷んだら
  すぐ取り換えられるんですよね?」


 ええ。
 でもそれは生きている細胞の話。

 皮膚の角質層や毛髪は
 死んだタンパク質でできていますから
 修復はされないのです。


 ただ、角質層で防ぎきれれば
 乾燥感くらいで済みますが、
 バリアが破られると内部に炎症が起きてしまいます。


 「それは刺激の強さによりますか?」


 そうですね。
 接触の強さにもよりますが、
 もともとの肌の強さにも関係しています。

 角質同士の接着が弱く、バリア力が弱い方が
 「肌の弱い人」なのではないかと
 牛田は考えています。

 接触を繰り返すとバリア力が低下し
 刺激の影響を受けやすくなっていきます。





 ▼非接触生活で予防を


 「修復できない角質層のタンパク変性が
  皮膚トラブルにつながることがわかりました」


 ええ。
 身近なタンパク変性ですが、
 皮膚にはできるだけ起こさないようにしたいですね。




 ☆ご相談・ご質問など、お気軽にどうぞ
   https://jstcd.or.jp/contact/

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