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2025年09月30日配信

皮膚科の傾向は?『医療費の動向』の秘密 | 第861号

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2025/09/30━☆
    健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと

           「秘密の皮膚科学」

    第861号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
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 みなさん、こんにちは。
 シニアフェローの牛田専一郎です。


 今週は毎年恒例の医療費のお話です。


 「医療費って年々上がってる印象ですが......」


 そうですね。
 どのくらい上がっているのか見ていきましょう。

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           皮膚科の傾向は?

         『医療費の動向』の秘密

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 ▼医療費って?


 「医療費といってもあまり
  ピンと来ないのですが」


 ひとことで「医療費」と言っても、じつは
 薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、
 訪問看護医療費などいろいろな種類があります。

 診療所や病院で治療を受けた時、
 保険証があれば、原則として自己負担は3割。

 みなさんが毎月納めている保険料で残り7割をまかなっています。

 医療費は、この医療保険による給付、さまざまな
 公費負担医療制度による給付、自己負担に
 よって支払った医療費を合計したものとなります。


 「複雑......」





 ▼医療費の変化は


 厚生労働省では毎年8月末に前年度の
 医療費の動向が発表されています↓

 ☆医科・歯科・調剤医療費の動向調査:集計結果
  https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/cyouzai_doukou_itiran.html

 令和6年度の概算医療費は48兆円。
 前年度比1.5%増でした。

 ◇概算医療費(単位:兆円)

 令和元年度 43.6
 令和2年度 42.2
 令和3年度 44.2
 令和4年度 46.0
 令和5年度 47.3
 令和6年度 48.0


 「4年連続で過去最高なんですね」


 ええ。
 高齢化や医療技術の高度化が原因とされています。

 診療科別に見るとこんな推移になっています↓
 https://hisesshoku-derm.com/archives/2025/09/post_16.php


 「これを見ると逆に減っているのは......
  内科、小児科、外科、耳鼻咽喉科ですね?」


 そうですね、白木さん。
 増えているのは整形外科、皮膚科、
 産婦人科、眼科です。





 ▼皮膚科が伸びているのは?


 「皮膚科は伸びているんですね」


 ええ。そのようですね。

 皮膚科の調剤医療費を見てみましょう。
 令和6年度は5,775億。
 前年度から1,669億伸びています。


 「ずいぶんと増えていますね。
  いったい何が増えているんでしょうか」


 令和6年度も注射薬で大幅な伸びが見られました。


 ◇「注射薬」薬剤料(単位:億円)

  平成30年 4
  令和元年 30
  令和2年 54
  令和3年 105
  令和4年 152
  令和5年 239
  令和6年 671


 「すごい伸びですね!
  でも皮膚科で使う注射薬ってなんでしたっけ」


 白木さん......。
 思い出してくださいね。

 タンパク質をもとに作られた生物学的製剤です。
 アレルギー性の炎症の原因となるIL-4/IL-13シグナル伝達を
 阻害する、免疫調整薬です。

 皮膚科ではおもにアトピー性皮膚炎の
 治療に使われています。

 アトピー性皮膚炎治療薬は
 さまざまなメーカーの開発が進んでおり、
 副作用が起きにくい、投与頻度が少ないなどの
 注射薬も開発されてきているようです。





 ▼アトピー性皮膚炎診療ガイドラインの改訂


 相次ぐ新規薬剤の発売を受けて、2024年、
 3年ぶりに「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」が
 改訂されました。

 注射薬を含む新規薬剤5種が
 掲載され、使用が強く推奨されています。


 「それで薬剤料が増加しているんですね」


 そうですね、白木さん。

 こうした新薬の使用対象が、
 「重症・最重症・難治性状態」(2018年版)から
 「中等症以上の難治状態」(2021年版)に変更されています。

 より幅広い患者さんに、
 さまざまな新規薬剤を使用できるようになったことが
 増加の一因でしょう。

 これまでのステロイドの塗布だけでなく、
 注射薬や経口薬など「全身療法」が
 取られるようになってきたのですね。


 今年度の医療費はどんな動向で推移しているのか。
 また来年発表されたらお知らせしますね。





 ▼お知らせ:用語の変更です


 『非接触生活』→『非侵襲生活』に。

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 ☆侵襲とは:

 生体の内部環境の恒常性を
 乱す可能性がある刺激全般をいう。 

 ここでは、皮膚の内部環境(バリア機能:細胞間脂質)
 の恒常性を乱す要因です。

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 侵襲を受けやすい肌体質の人が、侵襲を受けない
 生活(『非接触生活』→『非侵襲生活』)をしましょう、
 ということです。

 研究会としてこの方法をわかりやすく
 知ってもらう活動を続けていきます。




 ☆ご相談・ご質問など、お気軽にどうぞ
  https://jstcd.or.jp/contact/

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