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2025年11月25日配信

改めて?『活性保持型ビタミンC』の秘密 | 第869号

☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2025/11/25━☆
    健康な素肌を取り戻すために知ってほしいこと

           「秘密の皮膚科学」

    第869号 発行者:シニアフェロー 牛田専一郎
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 みなさん、こんにちは。
 シニアフェローの牛田専一郎です。


 今週は改めて活性保持型ビタミンC(ASVC)とは
 何なのかをお話します。


 「そういえばビタミンCが身体や肌にいいとかって
  言いますけど、何がいいんでしょう?」


 久しぶりにお話しましょうか。

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            改めて?

       『活性保持型ビタミンC』の秘密

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 ▼ビタミンCってどんなもの?


 「ビタミンCってよく聞きますし、
  風邪予防とか疲労回復とか
  身体にいい印象がありますね」


 そうですね、白木さん。
 具体的にどんなものなのかお話しましょう。


 【基本情報】

 一般名:アスコルビン酸(L-ascorbic acid)
 通称:ビタミンC
 性質:水溶性ビタミン/強い還元作用(抗酸化作用)を
    持つ有機酸
 構造:C6H8O6
 分子量:176.12

 ブドウ糖由来の6炭糖で、ラクトン環とエノール構造を
 持つため酸化されやすく、還元しやすい。


 多くの哺乳動物では、体内でブドウ糖からビタミンCを
 合成することができますが、ヒトには合成に
 必要な酵素がありません。

 体内で作ることができないため、
 食事での摂取が必須です。


 「ちょっと不便ですね」


 そうかもしれませんね、白木さん。
 体内では主に以下のような役割を担うと言われています。

 ◇壊血病の予防(血管・皮膚・歯肉の脆弱性改善
 ◇免疫機能の増強
 ◇鉄吸収の促進、貧血予防

 ◇抗酸化作用
 ◇ストレスを和らげる





 ▼皮膚に対する作用は


 ◇コラーゲン増加・しわ改善
  アスコルビン酸はコラーゲン合成酵素の補酵素であり、
  線維芽細胞内でコラーゲン産生を助ける

 ◇美白・色素沈着改善
  メラニンを作る酵素(チロシナーゼ)の作用を抑える

 ◇光老化からの保護
  紫外線により作られるメラニンの生成を抑制

 ◇抗炎症・創傷治癒サポート
  コラーゲン産生を促すため、創傷治癒や
  ニキビ跡の赤みの改善に役立つ


 「身体で作れないなら、サプリでたくさん
  取ればいいですよね!」


 残念ですが、白木さん。

 いくらたくさんビタミンCを口から摂取しても
 多くは副腎や脳下垂体などの組織に取り込まれ、
 吸収されなかったものは尿や便として排泄されてしまいます。

 なかなか皮膚には配分されにくいのです。





 ▼ビタミンCの弱点?


 「ふ~ん。それで肌に塗るものを
  牛田さんは考えたわけですね」


 ええ。
 ただし、アスコルビン酸は非常に不安定な成分。

 水溶性にすると酸化して
 活性が低下してしまうのです。

 そのため、化粧品処方ではキレート剤(EDTAなど)で
 アスコルビン酸を化学修飾して安定させる方法が
 一般的でした。

 これがビタミンC誘導体です。

 牛田は、水溶液では皮膚生理上
 浸透させることはできないと考えました。


 「皮膚には海水も泥水も浸透しないんですよね」


 はい。
 そこで、アスコルビン酸をナノサイズの結晶にして
 グリセリンに懸濁させてペースト状にすることにしたのです。

 冷蔵保存をして結晶状態のまま活性を保持させ、
 皮膚に塗布すると体温で溶解して活性を取り戻す
 ビタミンC製剤を開発したのでした。


 「誘導体とは何が違うんですか?」


 簡単に言えば、

 誘導体:ビタミンCに「カバー」をかけて別の分子として運ぶ
 ASVC:ビタミンCを「結晶のまま眠らせて」運び、使う瞬間に溶かす

 という感じです。
 水を含まないため酸化しにくいこともメリットです。





 ▼何もつけないはずなのに?


 「でも牛田さん......。
  創刊時から『何もつけない』を
  キーワードにしていましたよね?」


 そうですね、白木さん。

 キーワードとして使っている『何もつけない』ですが、
 これは皮膚が一次刺激性物質によって侵襲を受けないための、
 細胞間脂質の恒常性を守るための用語です。

 当初は、肌の数値測定を行い肉眼でも
 変化を見せていただいていました。

 そして、『何もつけない』だけでは、
 色素沈着などの改善に時間がかかり過ぎるため、
 ASVCを開発したのです。


 「あっさり言っていますが、牛田さん、
  研究室にこもりっきりでしたね」


 そうでした......。

 ASVCがどのように皮膚に浸透し、
 その作用機序は解明してはおりませんが。

 これまでの臨床では、
 ASVCがビタミンCの効能を肌で発現させている
 ことを肉眼で確認しています。

 これまでの製剤では起こらなかった顕著な変化に
 最初はかなり驚き、興奮いたしました。

 ASVCを試す機会があれば是非。
 (ASVCを化粧品規格にしたものがサウンドパックです)

 今後も研究を続けていきます。
 引き続きよろしくお願いいたします。



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  https://jstcd.or.jp/contact/


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